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【地元再発見の小旅行vol.2】宮城県南東部「まっすぐ地形」のナゾに迫る!

トップ画像は山元町ホームページ「四方山登山ガイド」より引用

前回は宮城県南東部の地形についてお話ししました。

上の記事では平野と盆地についてお話ししましたが、実は他にもっと目を引く特徴があるんです。気づいた人もいると思います。

ナゾの「まっすぐ」地形

では宮城県南東部の地形を見てみましょう。

スクリーンショット 2020-06-11 13.48.00

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

そう、仙台平野南部と角田盆地のあいだに、やけに「まっすぐ」なかたちの山地が細長くのびてるんですよね。
パッと見でも異様ですよね。なんでこんなにまっすぐなの?
もう少し広い視野で見てみましょうか。地形・地質では、ナゾを解明するには広い視野で見てみるのは非常に大切なんです。

スクリーンショット 2020-06-15 11.56.27

縮尺をだいたい2倍くらいにしました。
うお!細長い山地は途中で幅広くなりますが、まっすぐな地形は福島県の中まで、ずっと続いていますね。長い!
一応、目印の線を入れてみます。

双葉断層目印線

こんな感じです。まだまだ南へ続き、福島県の南部までつながっています。

実はこの線の一部区間は双葉断層と呼ばれる大きな断層で、その一部は活断層だと言われています。

双葉断層

文献によって範囲が多少違ってたりするのですが、赤線で描いた範囲が双葉断層の範囲です。
とすると宮城県南東部のまっすぐ地形は双葉断層ではないの?と言うと、ちょっと微妙です。
あくまでも、これまでの調査・研究結果から「はっきりと言えるのがこの範囲」ということであって、地下に隠れていて見えないだけという可能性もあります。
と言いますのも、宮城県の細長い山地も地質的に特異な場所ではあるんです。以下では、これについてもう少し深掘りします。

双葉断層については、また別の機会に詳しくお話しします。

割山隆起帯とは?

この細長い山地は地質の専門用語では割山隆起帯(わりやまりゅうきたい)と呼ばれています。「割山」は地名です。
つまり「割山と呼ばれる地域一帯が、地下からモリモリと盛り上がってきた」ということですね。
ただし注意していただきたいのは、地質で言う隆起とか沈降というのはあくまで周囲と比べてのことです。
割山が隆起しながら、周囲は沈降したと考えると良いかと思います。

イメージしやすいように、地質図の一部をご覧ください。

割山隆起帯

地質調査所5万分の1地質図幅「角田」より抜粋

スケールも凡例もつけてませんので、あくまで雰囲気をつかむために見ていただければと思います。
図のほぼ真ん中を南北にのびているピンクの部分が割山隆起帯です。時代で言えば中生代白亜紀(ちゅうせいだいはくあき)後期とのことなので、恐竜が生きていた最後の時代です。このピンク色の両サイドの緑やら青で塗られた場所はもっと新しくて新第三紀中新世(しんだいさんきちゅうしんせい)という哺乳類の時代です。だいたい1500万年前くらいです。
恐竜が絶滅したのが約6500万年前といわれているので、5000万年くらいの差があるんですね。(※地質時代については別記事で解説します)
地層は普通、古い方が下にありますので、割山隆起帯が地下から盛り上がってきたと考えられる理由の1つは、左右の地層との時代の違いが極端だからということのようです。
この隆起について専門用語では構造性地塁山脈というそうです。簡単に言うと断層運動によってできた細長い山地のことです。

そう、またしても断層でつくられた地形でした。長くなりますので、詳しくは別記事で書きますね。
断層は上の図のピンク色の左端にあるようです。そしてこの断層が、もしかしたら双葉断層とつながるのかも知れませんが、これまでの研究でははっきりは分かっていないみたいです。

山元町のホームページでは、トップ画像の「四方山(しほうざん)」のほかに、もうすこし南の「深山(ふかやま)」も紹介されていて、どちらも割山隆起帯に属する山です。
山元町民に親しまれている2つの山は、断層運動で隆起してできた山だったんですね。

それでは、今回はここまで。
お読みいただき、ありがとうございました。

参考文献

藤田至則・加納 博・滝沢文教・八島隆一(1988) 角田地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の1 地質図幅),地質調査所,99 p.

久保和也・柳沢幸夫・山元孝広・駒澤正夫・広島俊男・須藤定久 (2003) 20万分の1地質図幅「福島」.産業技術総合研究所地質調査総合センター.

久保和也・柳沢幸夫・山元孝広・中江 訓・高橋浩・利光誠一・ 坂野靖行・宮地良典・高橋雅紀・駒津正夫・大野哲二 (2007) 20万分の1地質図幅「白河」.独立行政法人 産業技術総合研究所地質調査総合センター.

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