真の実力が見える瞬間
あなたは専門家の話を聞いていて、どこにいちばん感心するだろうか。自称「専門家」のたぐいではなくて、真の本物に出会った時である。どこに感動するだろうか。
ぼくが、ほれぼれして「こいつはホンモノだ」と感じるのは、氷山の一角みたいな雰囲気をかんじさせてくれたときだ。
いまSNSには自称専門家が履いてい捨てるほどいるけど、付け焼き刃はすぐにばれる。そういうのにかぎって
としてくるのですぐわかる。でもちがうんだよな。
実力ってのは見せようと思って見せるものではなくて、隠そうと持ってうっかり出てしまうものである。水面上はかすかに動いているだけなのに、水面下で巨大なカタマリが
っと動いている感じ。たとえていうなら、ダイハツミラとフェラーリテスタロッサのちがいだ。おなじ時速30kmで走っても力感がちがう。
ミラがキャパ一杯で走っているのに対して、フェラーリはたけり狂いそうなエンジンを抑えに抑えて
てな感じで走っており、ふとしたはずみに
と、恐竜みたいなうめき声を上げる。乗ったことはないけれど。
専門家が真の実力をチラ見させてくれる瞬間もそれと似ている。
YouTubeの「自称」専門家には、ダイハツミラ的な人から、フェラーリテスタロッサ並みの人まで含まれているが、だれにでもわかりやすい動画にしなければならないのは同じなので、みな30kmで走っており、ぱっと見には見分けがつかない。
どちらもちょっとググればわかるようなことを言っているんだけど、でも真の専門家は、ふとしたはずみにアクセルに足がかかって、
なんつって隠していた馬力がむき出しになる。その一瞬を見たくて、ぼくは専門家を見る。
具体例を挙げてみよう。
昨日の記事の最後にチラッとふれた恋愛コンサルタントの有田まきさん。恋愛コンサルタントなんてゴロゴロいるけど、たいていのひとはすぐにネタが尽きて息切れしており、660ccである。
その点、「まきの部屋」はテスタロッサの4943ccエンジンが抑えきれずに
と唸る瞬間がある。
彼女は元々、大手企業の役員秘書さんだったそうなので、オヤジを転がすプロである。コロナ禍あってのYouTuberであり、本来ならぼくが手軽に話しを聞けるようなところに出てくる人ではなかったのだろう。
一見するとエロ系チャンネルに見えるけど、5分も話を聞くとそんな生易しいものではないとわかる。男性脳と女性脳をあわせもっているというのかな。知能のIQと感情のIQがここまで高レベルで両立している人と言うのはちょっといないのではないか。
見てもらえばわかるけど、とにかく頭がよくて、女性の微妙な心理を男性の脳みそで理解できるレベルに論理化してサラサラとしゃべってくれる。
たとえばこの動画
核になっているアイデアは心理学でいうところの「ジョハリの窓」というヤツなのだが、彼女はそれについて多くを語らない。
で終わりである。このあたり、ビジネスマナー講師としてさんざん「ジョハリの窓」を語ってきた百戦錬磨の雰囲気が伝わってくる。
これがドシロウトの動画だと
などと語って1本撮ってしまうところだが、そんな無粋なことはしないのだ。
さりげなく繰り出される決め台詞の数々もポイントが高い。
とか
などなどサラリと口にするのは、あたかも古舘伊知郎さんがボブサップに
とか、アンドレ・ザ・ジャイアントに
と言っているかのごとくである。
古舘さんは、一見さらりとアドリブでやっているように見えるが、実際には日ごろ考えに考えた膨大なフレーズのごく一部を使っていたのだという。有田さんも同じにちがいない。
「言語を制する者は恋愛を制する」の一言だけでもいくらでも語れるはずだが、そこは
とひと吹かししておわる。そこに経験値の氷山が動いているのがわかってゾクっとくるのである。
これは映画批評でもおなじことで、淀川長治先生くらいになるといたずらに知識をひけらかさない。余裕をもって
とひと吹かしして終わりである。
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