わからないことを苦にしない
今日は英語のリスニングに関する話なのですが、おもしろい発見があったので書いてみます。もうちょっと一般化できそうな気もします。
長年リスニングの訓練をやってきたんだけど最近
だと思わされることが多い。
しばらくまえの記事でも書いたんだけど、ぼくはいまXCOM2というビデオゲーム(戦略ゲーム)の北米版をプレーしている。
ゲームは、マリオカート以外は北米版でプレイすることに決めており、ゲームだけでなく、映画でもドラマでも買うのは北米版だ。もちろん遊びながら英語を伸ばすためである。
このゲームでは、地球を守る司令官をやっているので、エイリアンから地球を守るために英語を使っている。
外国語は道具なので、それ自体を学ぶよりなにかの目的のために使ったほうが伸びるのが早い。
そして前の記事では、「このゲームに必要な英語の処理能力がぼくの能力を若干越えているので、必死に食いついている」という風に書いた。
最初派そう思い込んでいたんだけど、およそ3週間プレイしてみて、いま
になってきたのである。
とはいえ、この3週間でリスニングとリーディングの能力が伸びたわけではない。ゲームに慣れたので余裕をかませるようになった。
この「世界に慣れる」というのがリスニングにおいては結構重要だと思うので、日本語に置き換えて説明してみよう。
ミノフスキー粒子は気にならない
たとえば、いま「機動戦士ガンダム」みているとする。よくアムロレイが
などというでしょう。
ぼくは初期のガンダムは全部見ており映画も全部見にいったけど、ミノフスキー粒子がなんなのかは
いまだにわかっていない。
でもガンダムを楽しむためにあたってミノフスキー粒子のことは知らなくても問題ないのだ。
と思っておけば十分である。
同じくエヴァンゲリオンでも、赤城リツコ博士が
などというけど、「ディラックの海」がなんなのかはいまだに知らないが、エヴァを楽しむうえではなんの問題もなくて
と思っておけば十分なのだ。
母国語ではこういう判断を瞬時に下せるワケだが、外国語ではむずかしい。
なぜ日本語でミノフスキー粒子やディラックの海が気にならないかというと、普段、日本社会でだれもそんな言葉を使っていないからである。
ガンダムもエヴァも全国放送の子供向けアニメであって、大学の物理学教室ではない。なので、知らない単語が出てきたらそれは
だと思って流せばいいとわかる。
しかし外国語では気になる
その点は、北米版XCOM2も同じことなのだが、外国語を使っていると、ついまともに理解しようとがんばってしまう。
この手の「戦略ゲーム」はそもそも操作が複雑で、遊びはじめの学習曲線が険しい。
最初はなにをやったらいいのかわからず、部隊は全滅した。そうやってテンパっている時にインターコムで博士がわりこんできて、エイリアンの解剖結果をまくしたてたうえに、研究室のせまさを愚痴られても頭に入ってこない。
などといわれて途方に暮れていた。
例えるなら、自動車教習所ではじめてクルマを動かしてテンパっている時に、となりに乗っている指導員から講釈されているようなものだ。
何も耳に入らないのに、
といわれて余計にてんぱる。これと同じことがXCOMでも起こっていた。
でも、今は操作になれたし、ゲームの世界観にもなれた。そうしてなってみると、博士の言っていることもしょせんは
ミノフスキー粒子みたいなもの
なのだ。
結局のところ、緊急対応しなければいけないのか、それともOKボタンを押して受けながせばいいのか、そこの判断さえすればよくて、その判断は、
博士の焦り方でわかる
のである。ミノフスキー粒子はググらなくてもだいじょうぶだ。
そういう余裕ができてみると、博士(を演じている声優さん)はぜんぜん早口ではなくて、むしろ滑舌がよく、ゆっくりとかみくだいてしゃべってくれていることもわかってきた。
こういう「慣れ」は、ゲームやクルマへの慣れであって、英語そのものとは無関係なんだけど、日本語でミノフスキー粒子をスルーできるように英語で余裕をかませるようになるには、とりあえず、場数を踏まねばならない。
デューデリジェンスもわからなくていい
似たようなことは最近。ドラマでも経験した。
ブラックフライデーセールで北米版の「Succession」というドラマを1
~3シーズンまで買ったんだけど、邦題は『メディア王 〜華麗なる一族〜』というらしい。
これも第1話を見た時はあわてた。
どの役者が社長を演じ、だれが顧問弁護士かもわからない段階で、株価が下がったとか、融資が焦げ付いたとか、取締役会に入れるとか入れないとか、デューデリジェンスがどうとかまくし立ててくる。
でも、考えてみれば、これは全国ネットのドラマであり、経営者セミナーではないので、お茶の間で見ている人の大多数は、僕と同じくデューデリジェンスなんかわからないはずだ。
全米のお茶の間の人々は、いちいち再生をストップしてデューデリジェンスをググったりしない。すっ飛ばしているだけである。
僕とのちがいは、
わからないことを苦にしていない
という点にある。
こういうことは3話目まで来るとだんだんわかってくる。そういう経営判断はどうでもよくて、この華麗なる一族がいかにお下劣な連中かというのを楽しんでみればいいのである。
というわけで、今では経営の難しい話をされても右から左に聞き流すので余裕だ。
先物取引のこともわからなくていい
おなじことは、昔エディマーフィーの『大逆転』という映画でも経験した。あれはホームレスのマーフィーが、オレンジの先物取引で大富豪になるという話だった。
そして、こないだアメリカの経済ラジオで「そもそも『大逆転』はどうやって儲けたのか」というのを専門家が解説していたけど、こういう番組が成り立つということ自体、公開当時だれもわかっていなかったということなのである。でも、みんな良い映画だと言っていた。
つまり、この場合は
ということだけわかれば十分なのだ。
だいたいの物事はこういう風によゆうをかませばいいのだが、外国語になると先物取引やらデューデリジェンスのことがわからないことと、英語がわからないことを混同して、テンパってしまう。
リスニングとは「早めに余裕をかます」技術
ぼくが「華麗なる一族」で余裕をかませるまでには3話かかったけどネイティブの人は一瞬で聞き流せる。
それは、ネイティブの人が、「自分にわからないことは、誰にもわからない」と思っているので慌てないからだ。
そしてぼくが慌てたのは、「英語力が足りないから自分だけわかってないんじゃないか(汗)」と焦ったからだ。
肩に余計な力が入っていたからで聞き流せなかったわけで、肩のを抜く技術は教室ではなかなか身につかない。こうして遊びつつずうずうしさを増していくしかないのだなあと改めて思ったのだった。
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