見出し画像

もりあがれ、そして、おちつけ

昨日は五輪の野球の試合についての記事をかこうと思っていたけど途中でやめにした。なぜかというと五輪の盛り上がりにつれて、感染も拡大していたからだ。

いまメディアでは、「もりあがれ!」というメッセージと「落ち着け!」という2つの矛盾したメッセージが同時に流れている。

昨日の野球の試合がいい例だった。「日本対ドミニカ共和国」は劇的なサヨナラ勝ちで日本が勝った。そしてNHKのスタジオに切り替わりわーっと拍手がおこったのである。

ひとしきりもりあがったところでニュースにきりかわり、きびしい表情のアナウンサーが「東京都の感染者数が3000人を突破しました」とニュースを読み上げてヒヤッとさせられた。だがそのあと、卓球女子に切り替わってまた「わーっ」である。ワーッ ー> ヒヤッ ー> ワーッが10分くらいで切り替わった。

もちろん、普段のニュースでも似たようなことはある。力士への優勝インタビューのあとで土砂崩れのニュースになることもある。しかし、大相撲の話題でもりあがったとしても、そのせいで被災地の状況が悪化したりはしない。

だが、五輪の場合はちがう。ワーッと世間の温度が上がったせいで活動的になった人が感染を広げている可能性がある。だれもが当事者になる危険性がある。

昨日も紹介した臨床心理学の記事によれば、「もりあがれ!」と「落ち着け!」の両方のメッセージが来た場合、「人間の心理としては、自分が聞きたいほうだけを取り入れてしまう」のだそうである。

「もりあがりながら落ち着く」というような、ブレーキをふみながらアクセルを踏むようなことはなかなかできない。

ぼくが「野球がおもしろかった」という記事を書くのをやめて、感染拡大に危機感を持っているという記事を書いたのは、「もりあがれ!」を捨てて「落ち着け!」を選んだということだ。

もちろん逆の人も多い。上記の記事では、「いま多くの人が今もりあがろうとしており、結果的に『ウイルスはたいしたことがない』と軽くみてしまう『楽観バイアス』が強まっている」としている。

もちろん、おちつきながらもりあがることができればそれに越したことはない。浪費をしながらお金がたまるのがいいし、たらふく食べながらダイエットできるのがいいに決まっている。二兎を追って二兎を得られたらこんなすばらしいことはない。

しかし、ことわざでは「二兎を追う者は一兎をも得ず」とされている。ダイエットをしたければ食べるのを我慢するしかないし、食べたければダイエットはあきらめるしかない。どっちつかずにしていたら、食べたいものを食べてないのに体重が増えてしまう。なので、ぼくはとりあえず落ち着くほうを選ぼうと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?