見方をコロコロ変える

2010年代には、中国人旅行者が世界各地でひんしゅくを買ったが、バブル期には日本人旅行者もずいぶんバッシングされた。

覚えている人も多いだろう。

中国人旅行者は、「すぐ痰を吐く」とか「うるさい」と言われているが、当時の日本人は、「いつも群れている」「全員背が低くてメガネ」「くびから高価なカメラをぶらさげいてる」とバカにされた。

当時のハリウッド映画を観れば、そういう日本人の姿がちょこちょこ描かれているのがわかる。

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そのころ、ジャズトランぺッターの「帝王」ことマイルス・デイヴィス(1926-1991)が来日した。

ジャズミュージシャンには親日家が多い。マイルスも晩年は体調がすぐれずあまりおもて舞台に現れない人だったが、けっこうムリしてフェスに出てくれた記憶がある。

今調べたら90年だった。死ぬ前の年だ。

そのときの雑誌のインタビューだったと思うんだけど、日本人旅行者のことが話題に上った。そこでマイルスは言ったのである。

「おまえら日本人はいつも群れて歩いているよな。あれはかしこい。ああすれば襲われないですむ」

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「群れていてカッコウ悪い」というのは白人の見方だ。

黒人のマイルスから見れば「群れているのはかしこい」ということになる。

マイルスじしん、殴打事件というのがあった。すでに有名になったあとで、ライブハウスの裏口で出番の合間にタバコを吸っていたところを白人警官にいきなりボコボコに殴られたのである。

とうぜん翌日の新聞のトップニュースになったのだが、あれから50年。フロイド氏事件のことを思うと、おどろくほど変わっていない。

というわけで、群れている日本人旅行客がみっともないのか、それともかしこいのかは、どちらが正解ということでもなくて見る人の立場次第だ。

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単一のできごとでも、受け取る側の視点によって180度ちがった評価がくだるのはよくあること。

昨日や、その数日前のnoteでもあるていど丁寧に書いてはいるのだけど、ぼく自身は、なるべく特定の党派的なモノの見方にとどまらないように努めている。

...というとカッコいいけど、要するに意見をコロコロ変える。あまり一つの考え方に長くとどまらないようにする。あらゆるものごとには正反対の見方が必ず成り立つと思っているので、正反対の見方をさがす。

今日は原爆忌だ。そしてまもなく終戦記念日である。

これについても、いろんな見方がある。人の命がかかっているので感情的になるなというのがムリなハナシなのだが、ともかく冷静に考えてみたい。

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