「山田さんのトマト」はおいしいのか
スーパーの野菜コーナーにいくと生産者の顔写真とともに売られているパターンがあるじゃないですか。
>山田さんのトマト
みたいな感じのやつだ。・・で、ここから先はへりくつだと思って読んでいただきたいのだがあれには前から2つの疑問を持っていた。
①山田さんが山田さんなのかわからない
②山田さんが誰なのかがわからない
の2つである。①は「本人確認ができない」という意味であり、②は、優れた栽培農家なのかがわからない、という意味だ。
まず①だ。たとえば週刊誌の広告であやしげなネックレスや印鑑などが売られているが、そこにはだいたい体験者の声がのっており
「このウルトラマグネットブレスレットをつけたとたんに、彼氏ができて、宝くじに当たって人生ウハウハです」山田さん(41)
などと書かれてこの山田さん(41)の顔写真が載っている。しかしあの写真が正真正銘に山田さんだと思った人はいないだろう。たぶんどこかからテキトーに取ってきた別人の写真である。
同じく「山田さんのトマト」の写真の山田さんが鈴木さんでも佐藤さんでもなくトマトを作っている山田さんだという証拠はどこにもない。スーパーにも信用があるのでそんな詐称はしてないだろうけど、免許証を見せてもらわないと分からないのは事実だ。
しかし②の問題もある。本当に山田さんだとしてもそれが=おいしいという証明にはならない。「山田さんのトマトだからおいしい」と表記されていればわかるが「山田さんのトマト」だけではおいしいのかマズいのかわからない。もしかしたらトマト栽培が下手なことで近所では評判の人かもしれない。しかし、消費者は「わざわざ名前を出しているくらいなんだからおいしいんだろうな」と勝手にそうぞうしてしまう。そこがずるいところだ。・・とまあ、そんな風なへりくつをこねていたわけだ。
でも最近、知り合いの人が育てたお米を買った。おいしいと聞いたので買ったのだがじっさいにおいしい。噛むと甘いというかフルーティな感じがする。ご飯一杯でこういう風においしいというのを体験したことがない。
しかもそのうえで顔を知っており、これまでの紆余曲折があっていま独自の栽培方法を編み出した話を聞いている。
しかも最初にお会いしたのはご本人がコメ作りを志すより前だった。先月十数年ぶりに偶然再会し、その後の展開を聞いてからたべるので感慨深い。コンテンツを食べている感じだ。
スーパーに並んでいるトマトにもそういう作り手の人生や思いがあるのかもしれず、農作物というのは本来そういうものだったのかもしれないが、ぼくは工場作られたもののように匿名の品として食べていた。あれにくらべれば顔の見える「山田さんのトマト」のほうがおいしく感じられる。
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