雪女の伝説に思う
鈴木宗男参議院議員といえば、かつては疑惑のデパートなどと呼ばれ、汚職疑いで起訴されて懲役2年の実刑判決を受けている。ただし、今ふりかえって諸々の情報を総合すると、鈴木宗男事件は
だったという印象を受ける。たぶん「ハメられた」のだろう。
有権者を信じる
ただし、宗男議員本人はあれだけ世間に叩かれたにもかかわらず、人間不信に陥っていない。それどころか、ブログではよく
みたいなコメントを繰り返しており、「ポピュリズム」みたいな見下したことを言っているのは見たことがない。
それは「支持者へのリップサービス」もあるだろうし、「元々のお人柄」もあるだろうし、なんといっても「民主主義に対する信念」があるのだろう。
とはいえ、宗男議員は「大衆は正しい」というお題目を唱えているというより、いろんな時事問題をつうじて「やっぱり正しいんだなあ」と感心しているように見える。どうやら、昨日の記事で書いたような「集合知に感心している」部分が大きいようなのだ。
集合知が正確なわけ
民衆は、扇動されるとホロコーストのようなこともやってしまうが、驚くほどかしこい場合もある。
昨日紹介したアメリカのポッドキャストでは、大衆の集合知の正しさを示すために、「牛の体重あてコンテスト」という実験をやっていた。これについて僕は2019年にツイートしているので、ちょっと引用してみよう。
ちょっとわかりにくいかもしれないが、ウェブ投票で集まった1万7000票の全体平均のほうが、畜産業者だけの平均値より正確なのである。
このような集合知の正確さの理由は「多様性」がポイントなのだろうと考えられている。
「情報カスケード」というのがいわゆる「集団心理」とか「烏合の衆」などと呼ばれている状態のことで、集団の内側にいると、その集団の作り出す『マトリックス』のような世界から抜けられなくなってしまう。
ぼくもいま現在日本という社会の内側にいるので、当然そのマトリックスの中にいるが、かなり周縁に位置していて、いてもいなくてもいい存在であり、おまけに英語屋である。
「いてもいなくてもいい外国語屋」というポジションほど不要でウザい連中はなかなかいない。家庭におけるぶら下がり健康器よりうざい。
などと見られて良いことはないが、情報カスケード(情報の滝)の下にいないことが多いというか、そもそも頭数に入っていないのでカスケードのほうから避けてくれる。
さて、日本のことは置いておいて、アメリカのことを書いてみよう。国内を流れる情報の滝は、内部にいる人よりも対岸にいるほうがよくわかることもあるのだ。
トランプ旋風の真実
2016年にはトランプ旋風が起こったが、これも一種の情報カスケードだった。外国人から見るとまったく理解できないというかバカバカしいというか、
と思わされるようなことだったし、今でもトランプを救世主だと信じている人々を見るとイタい連中だなと思う。
ただし、今度の中間選挙でトランプの波は起こらなかったにもかかわらず、あいかわらず彼を支持している人々を見ていると、全部が全部イタい人だとは思えなくなってきた。「全部が全部イタい人たち」だと信じているほうこそ、別のマトリックスの中にいるのではないかと思える。
今なんとなく感じるのは、トランプ支持者たちは、民主党の本流にいるエスタブリッシュメントに一種の薄気味悪さを感じているのではないかということだ。
「ヒラリーがペドフェリアだ」といううわさを最初に聞いたとき、なんとバカな連中だと思ったものだが、今では、その空想がヒラリーの持つ一種の薄気味悪さに支えられているのだと感じられる。そして、トランプにその薄気味悪さはない。
「トランプくらいバカっぽい人を支持する」という感覚は、警官に殺されないのが当たり前の国にいるとバカっぽく思えてしまう。しかし、雪女の伝説が真実に支えられているように、民話的な集合知に支えられている面もあるのだろうと思えるようになってきた。
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