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「無敵の人」を異常扱いするのはやめたほうがいい。状況は思っている以上に深刻だ。
聖書には「富める者はますます富み、モテるものはますますモテる」という言葉があるそうだが、もちろんウソである。そんな言葉はなくて、実際は、
富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる
と書かれている。
この場合の「富(とみ)」が何を意味しているのかは諸説あるらしいが、基本的には「神の祝福」という意味に受け取られている。そりゃそうだろう。そうでなければ宗教の教えにならない。
しかしだれでもわかるとおり、この「富」を資本主義社会における私有財産という意味に置き換えたとしても、ドンピシャで当てはまる。お金持ちはどんどんお金持ちになっていくし、貧乏人はますます貧しくなっていくのが資本主義社会ってものだ。
そして、これはお金以外にも当てはまり、たとえば「モテ」にもまちがいなく当てはまるわけで、モテる人はどんどんモテるし、モテない人はとことんモテない。
なお、本日のテーマは「無敵の人」です。
最近、草食男子というようなことが言われるがあれは大人の作り出した都合のいいウソなのだそうだ。そのことを統計データに基づいて一貫して唱えているジャーナリストの人がいて、なかなか考えさせられた。たとえばこういった記事がある。
それにしても、この記事のタイトル↓↓↓いいですね。
「独身が増え続ける原因を「若者の恋愛離れ」にしたがるメディアの大ウソ ― 今も昔も恋愛強者は3割しかいない」
いいたいことが1行に凝縮されていて、いちいち説明しなくて済むのでラクだ。これからはぼくもこういうタイトルを心がげたいものである。
さて、筆者は「独身研究家」の荒川和久さんと言う人で、彼に言わせれば
今月14日に、NHKが「結婚や異性と交際していない人増加 女性は20年で1.5倍に」というニュースを報じ、話題になりました。こういう報道を見て、世のおじさんたちは「そうだな、その通りだな。イマドキの若いもんは……」と膝を叩くのでしょう。しかし、申し訳ありませんが、少なくとも「恋愛において若者が草食化した」などという事実はありません。虚構です。
ということである。
NHKの報道の根拠になっている「出生動向基本調査」の中の「独身者調査」というもの自体が統計的に恣意的な操作が行われているというのが筆者の主張で、なかなか説得力がある。
データをより長期的なスパンでみれば、いつの時代も恋人がいる率は、2~3割にかぎられるのだそうである。著者の主催するラボで独自調査した結果も同じで、男女とも大体3割前後で一定しているという。
それからもう一つ、男性には絶望的なデータがあって
20~50代までの未婚男性は、女性より300万人も多い。
これは日本に限った現象ではなく、世界的にもともと男児のほうが出生率が多い。しかし、昔は男児のほうが乳幼児死亡率が高かったのでバランスが取れていたそうである。
しかし、いまでは乳児が死なないので全世界的に男余りが発生している。
アメリカでも900万人、中国では3000万人以上、インドに至っては5000万人もの未婚男性が余っています。
「オーマイガー!」である。しかも、
自由恋愛になればなるほど、格差が広がります。(中略)離婚した男性は、再婚率も高く、その相手は初婚の女性を選びます。要するに、一部の恋愛強者の男性が次々と初婚女性と結婚と離婚を繰り返すという「時間差一夫多妻制」によって、未婚のままの男性はそのまま生涯未婚で過ごすことになるというわけです。
まったくのオーマイガー!である。
かつては、お見合いや職場婚(寿退社を前提に採用した女性社員と男性社員が結婚するシステム)などがこの偏りを是正する役割を負っていたいそうだが、いまではほとんど廃れてしまった。
そのうえで、日本社会では1960年生まれの人を中心に「恋愛至上主義」の時代がおとずれた。ぼくがマンガ「タッチ」などを読んで誤解していたように「多くが恋人を有し、恋愛を謳歌していたかのように錯覚している」中年が後を絶たないそうだが、実際にはいつの時代も恋愛は3割しか成立していない。
さて、この文章はその7割の人々に宛てたものではない。その人々を「モテ方」だの「稼ぎ方」だので釣るようなやくざなマネはぼくにはできない。彼らに対して言えることはせいぜい、
ヤケになって事件を起こさないでもらえたら、うれしいな
くらいである。そうではなくて、この文章は残りの3割の勝ち組の人たちに向けて書いている。
世間で発言力のある人というのは、まあまあ有名な人たちである。そしてそういう人たちは程度の差こそあれ、基本的には3割の強者の側に入っている。
有名とまで言えなくても、男女でわちゃわちゃ集まって「イベントやろうぜ~」などという発想ができるひとはそもそも全員が全員、健全な3割の側に属しているのである。そして、自分たちがどれほどめぐまれているかということを忘れている。
ぼくは、幸か不幸か7割の側にいたこともあるし、3割の側にいたこともあるので、どちらの側からの世界の見え方もあるていどはわかる。
3割の側からしか世界を見たことのない人が、「無敵の人」の犯罪に異常だのなんだのいうのはやめたほうがいいし、世界中の3割の健全な人々同士が「わかりあって」も世界は何にも変わらない。
世間の多数派の声を代弁しているのはむしろ無敵の人の方であり、彼らは7割の「可視化されにくい人々」の中から突き出た氷山の一角なのだ。
お金とちがって、モテには「ユニバーサルベーシックインカム」というソリューションがないので、事態はさらに深刻だ。
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