『おしん』はなぜ世界で受けたのか
いま国際的に話題になっている『音楽』という日本製アニメがある。ぼくは海外で受けていることなどまったく知らず、単に「ふと気になった」というだけでAmazonプライムビデオで観た。
いま『サント VS ゾンビ』(1962)という作品を見ているが、これをクリックしたのと同じ感覚だ。直感と興味だけである。
ちなみに『サント VS ゾンビ』は、ナゾの覆面レスラー"サント"がゾンビと戦うという物語だ。国際的な評価はゼロだとおもうけど、覆面レスラーがゾンビと戦うと聞いただけで「見ないとぜったいに後悔する」と感じたので見ている。
いまのところ、サントはゾンビにボディスラムや頭突きをかましているが、ゾンビウイルスに感染している様子はない。
それで『音楽』なのだが、「国際的評価を全く知らない」というところがポイントである。そこに注意してくださいね。
ぼくが見終わったときの感想は、
とても優れた作品だが、国際的には受けないだろう
である。どうです?無知ってすごいでしょう。海外の評価を知っている人にはぜったいに思いつくことのできない感想だ。
ホントのことをいうと、これを書く前に検索して海外の評価を知り、あわててアイデアを修正している。注意一秒ケガ一生である。調べてよかった(汗)。さて『音楽』は・・
楽器を触ったこともなかった不良たちが思いつきでバンドを組む、ロック奇譚
である。予告編↓
たしかに見終わってスカッとし、すぐにツイッターに「見ないと損する!」と入れようと思ったのだが、そこで思いなおした。
ぼくがここまでスカッとしたのは日本の高校生の抑圧された感じに無条件で共感したからではないか。つめえりの学生服を見ただけで伝わってくるあのうっとうしい感じがなければラストのカタルシスもないのではないか、と。
ちょうどそのころ、緊迫するウクライナ情勢や台湾有事にいろんなことを考えているところだったのでなおさらそうかんじた。日本が生き残るためには、プレイステーションではなくて任天堂Switchの路線が必要なんじゃないかと思っていたのだ。
プレイステーションは、まずアメリカの土俵に上がって、XboxやPCゲームと戦ってから世界に出ている。そうではなくて、マリオが直接世界に通じたような、「おしん」が80年代の世界を席巻したような感じを出していかないとこれから先はキツイな、と思っていた。
『おしん』は見た目がまったくアメリカナイズされていない。だからこそ親米の国でも反米の国でも関係なくよろこばれるところがあった。
調べていないのではっきりとわからないけど、たぶん『ちびまる子ちゃん』は「おしん」のようには世界で受けていないと思う。そして『音楽』もやや「ちびまる子ちゃん」っぽいというかやや内向きな作品に思えた。
なんでこんなはずかしいことを書くかというと、国際的な評価をまったく知らない無知ゆえに書ける「王様は裸だ」みたいな見方にも存在価値があるかなあと思ったからである。
『シンゴジラ』は劇場で見てすぐ傑作だ!と思ったんだけど、海外ではおおむねバカにされている。当時はその感じを実感できなかったが、ぼくもあれから3回見て、海外で笑われている感じがわかるようになってきた。
アフガン撤退やウクライナ情勢やイラクの核合意の報道に接した後で、日本政府が怪獣への防衛出動をおおまじめに議論している描写を見ると笑える。その反省があったので、『学生』もキツイなあと思ったのかもしれない。
昭和の記憶がなければ、怪獣に向けてしかミサイルを発射できないこの国の平和ボケした感じは伝わらない。同じく昭和の記憶のない観客にツッパリがロックする感じがどう伝わったのか、まだよくわからない。
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