ローマへの道、または世界最古のインフレについて
今日は アメリカ文明のこれまでと今後についての話をします。
さて、たしかイタリアの作家アルベルト・モラヴィアだったと思うが、自伝の中で「アメリカは20世紀のアレキサンドリアだ」と書いてあったような気がする。これですね『モラヴィア自伝』
さすがヨーロッパの作家らしくアジア人にはない視点でアメリカを一刀両断にしていた。そして、昨日タランティーノの『パルプ・フィクション』を久しぶりに見ていてまさにそうだなあと思ったのである。
ぼくがはじめて『パルプ・フィクション』を見たのはGoogleが生まれる前であり、アメリカはこれからインターネットを制覇して絶頂期に向かおうという時期だったのでそこまでの感慨はなかった。
でも今になってみるとモラヴィアの指摘は身にしみる。
アレキサンドリアとはアレキサンダー大王がつくった大都市であり、これに代表されるヘレニズム文化は古代ギリシャ文明を模倣し、洗練させ、爛熟させていった。
モラヴィアは、古代ギリシャとアレキサンドリアの関係が、ヨーロッパとアメリカの関係にそっくりだと言いたかったのだろう。日本で言えば江戸後期に文化が爛熟した時期があったが、アメリカはああいう場所だということだ。
アメリカは基本的にフォルマリズムなのである。つまり内容より形式。要するにカッコいいわけだ。
でもそんな感じになっていったのはたぶん1920年代の世界恐慌の頃からだと思う。そのころから次第に世界での存在感を増すとともに、ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、フォークナーといった生き方そのもののカッコいい作家がカッコいい作品を書く雰囲気が生まれた。
『パルプ・フィクション』は、カッコイイアメリカのパロディであり、ノワール(犯罪映画)のパロディであり、そのパロディが極まっている。当時は気づかなかったが、こういう映像作家が現れるということはアメリカ文明が爛熟し、行くところまで行きついたということだったのだろう。
アレキサンダー大王はまれにみる大帝国を打ち立てたがやがて滅びた。大王の死とともにインフレが起こり、これが世界最古のインフレと呼ばれているそうだ。その後なんやかんやででローマ帝国の時代がやってくるわけだがモラヴィアがそこまで見抜いていたかどうかはわからない。
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