中年男性には一瞬のニヤニヤ笑いも許されない

「90年代ジャージ」というものがある。

まあ、ぼくが勝手にそう呼んでいただけなのだが、ためしにGoogle検索してみると"90年代ジャージ"でちゃんとヒットする。

長野オリンピック前後にはやった型で、袖口と裾がキュッと締まっているのが特徴だ。

沖田修一監督の『南極料理人』の中で、隊員が着ている。

南極料理人

この作品は1997年という設定なのだそうだ。芸が細かい。

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ぼくも90年代ジャージを所有しており、色は生瀬勝久さんが着ているのとまったく同じである。

いまさら外に着て出られないので冬に部屋着として愛用している。暖かくて重宝しているのだが、それをみて妻がバカにする。

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数年前のある日、外を散歩していると中学生の一団とすれ違った。遠足かなにかの帰りだったのだと思う。全員がジャージ姿だ。

それが90年代ジャージだったのである!

色もぼくや生瀬さんが着ているのとまったく同じで、裾がすぼまった90年代スタイル。

だが、時は2010年代後半である。なんということだ。今の子は、中学校入学と同時におそろいの90年代ジャージを買わされるのである。

20年以上モデルチェンジしない業者。。。努力なしで儲かる学校納入の利権。できたらぼくもあやかりたい...

などと思いつつ「帰ったら言ってやろう...」とニヤニヤ見ていた。

すると刺すような視線が飛んできたのである。女子中学生の父親らしき人がこちらをにらんでいる。

そりゃそうだ。ニヤニヤしながら女子中学生を見ている男は、親からすれば性犯罪者にしか見えないだろう。

ぼくは笑いをひっこめ、すばやくその場を立ち去ったのであった。

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今の時代、中年男性には一瞬のニヤニヤ笑いも許されない。

実家に帰ったとき、小学校の横を通ることがある。なつかしいので本当は中を覗きたいけど、だれに見られているかかわかったものではないので、一切そちらに視線を向けないように心がけている。

もう何十年も母校をちゃんと見ていない。

こういうのは窮屈だよなあとグチるつもりだったけど、先日、近所の公園で襲われそうになって以来、襲われる側の怖さもわかった。

なので、小学校が見れないくらいのことはガマンしようと思う。

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