「おかえりなさい!生れ変ったコトリの家に。」家事に遭われた河瀬さんのあたらしいお家。
河瀬さんが火事に遭われた、2020年2月。
何もかも焼けてしまったお家。
その時から、何度か写真を撮らせていただいています。
そして1年以上が経ち、ようやくあたたかくなった来た3月のある日。
私は久しぶりになってしまいましたが、お家が新しく生れ変った引き渡しの日、写真を撮りにいくことになりました。
河瀬さんのお家には名前があります。通称「コトリ」です。名前の由来は、前のお家を設計された建築家の方が名付けたそうです。
お家の引き渡しには、建築家の中村さんやご一緒に設計を担当された強谷さんをはじめ、建築に携わったたくさんの方がいらっしゃっていました。
河瀬さんご一家の到着をソワソワしながら待たれていたみなさん。そんな時、中村さんに「こっちこっち」とこっそり呼ばれました。
「あのね、今日ね、サプライズを用意してるの。みんながどんな顔をするのか見たいんだ。その瞬間、動画撮ってくれない?」とソワソワ、そして嬉しそうに話してくださる中村さん。
河瀬さんたちに喜んでもらおうと、お家を作ったみなさんからのあるサプライズ計画のはじまりでした。
家族が使いやすいキッチンや、秘密基地みたいな場所、みんなで集まるリビングのソファにはお昼寝できる工夫・・・
河瀬さんご一家、そして中村さんをはじめたくさんの方の想いが詰まったお家に、あちらこちらで笑顔が生まれます。
「遠足に行く前の子供みたいにわくわくしてる」といただいてた河瀬さんのメッセージを思い出す私。
設計を担当した、建築家の中村好文さん。
中村さんは、河瀬さんが担当された番組で特集し、中村さんの"家”に対する想いに触れてから「この方に家を設計してほしい」と願った方です。
河瀬さんは火事に遭った数日後、そのことを報告するために電話をかけました。すると、「僕がやるよ」とすぐに中村さんは言ってくれたそうです。
そこから誕生した、新しいお家、コトリ。
中村さんをはじめたくさんの方の方の想いが詰まったお家。
あたたかい光がお家いっぱいに差し込みます。
でもそんな中、優しい光の入るキッチンにカメラを向けると、フラッシュバックするようにあの時の光景が頭に浮かんできました。
頭に浮かんだのは、痛ましい光景。
でもそれと同時に、あの時河瀬さんご家族の為に集まった、たくさんの方の姿が浮かびました。
火事に遭われてすぐ、河瀬さんを支援するために立ち上がった「かわせ大作戦」というFBグループには400人近い方達がいて、情報提供や物資も送られていました。週末にはたくさんの仲間が、焼けてしまった家財出しのお手伝いに駆けつけました。
「河瀬さんの力になりたい」という想いで溢れていました。
そして目の前の光景を見てふと思ったのです。
「こうしてこの日に立ち会えて、あんなに喜んでもらえて、本当にありがたいですよね。嬉しいです。」とお話される工事業者さんや、嬉しそうな河瀬さんたちを見て、思わず笑顔がこぼれるみなさん。
目の前にある光景は、あの時と同じで、お家を作られた方々から「河瀬さんの力になりたい」という想いがたくさんが溢れていました。
その時それぞれのひとができること、想いがひとつひとつ繋がって、今がある。
そして引き渡しの時間は終盤に。下の階での説明を受けに行く階段の途中には、気になる銀のレールが。
「これなあに?」と聞くご家族に、
「それは後で説明しますね」とさらりとかわす中村さん。
実はこれが、サプライズの仕掛け。
終盤の説明を聞くご家族の横でこっそりと封を開け、銀のレールに設置します。
そーっと慎重に、レールに掛ける強谷さん。
私も動画をスタンバイ。ドキドキ・・・!
準備が整ったら、いよいよサプライズの時間。
中村さんがご家族に声をかけ、階段下に集まってもらいました。
そしてお子さんに「これを開けてみて」とサプライズの箱を取ってもらうとそこには・・・
そこにあったのは、焼けてしまったお家が解体される前の日、
みんなで壁いっぱいに書いた"落書き"の一部。
「コトリ、またね」と壁いっぱいに書いたお子さんの落書き。
中村さんは、その一部を切り取って残してくれていました。たくさんの落書きで溢れていたので、どこを残すかすごく悩まれたそう。
箱を開けて、落書きを見た瞬間。「えっ!!残してくれてたんですか!?」というびっくりの声とともに、河瀬さんの目に思わず涙が溢れていました。
そして喜んでくれたご家族をみて、マスク越しだったけど、嬉しそうな中村さんの姿。動画を紹介することはできませんが、この瞬間、本当にあったかくて、感動に満ちた空気でいっぱいでした。
中村さんや強谷さんは、飾る場所もとても悩まれたそうです。
そうしてみんなの目に一番飛び込んでくる場所に飾られた、コトリの一部。
前のコトリと、新しいコトリが一つになりました。
それはまるで、このお家の心臓のように見えました。
撮影が終わり家に帰ると、河瀬さんからこんなメッセージが。
あの最後のサプライズ、しほちゃんが前にも写真撮ってくれてたあの落書き。火事にあって涙ぐんだことはあるけど、堪えきれずに泣いたのは今日が初めてでした。なんか季節が一周したんだなぁって思います。
人生で忘れられない1日になりました。
そしてその後、私にも嬉しいサプライズがありました。
あの時私が撮った写真をつかってくださってお礼の葉書が届きました!
そこにはあの時の写真のほかに、生れ変わったコトリの家での日常が切り取られた素敵な写真も載っていました。
私にとっても、こんな日がくるなんて。
一年前のあの時には、想像もできませんでした。
季節は一周しました。
春が来て、もうすぐ夏にもなります。
どんな時でも時間は流れ、楽しいことも、つらいことも、
一瞬たりとも同じ状況は続かず、やがて春になるんですね。
これから新しいコトリで、河瀬さんご家族に
前よりももっとたくさんの笑顔と幸せで溢れますように。