苦手な人が多い根抵当権を理解する①

まずは用語理解から

根抵当権には4つの要素がある

1、根抵当権者 誰が
2、債務者   誰と
3、債権の範囲 どういう取引をした場合に
4、極度額   いくらまで担保にするか

また、
不随性がない
随伴性がない
不可分性がある
物上代位性がある

このことを抑えましょう

なお、抵当権の要素
1、抵当権者  誰が
2、債務者   誰と
3、担保物件  何を(不動産のみ)
4、被担保債権 いくらか

また、抵当権は
不随性
随伴性
不可分性
物上代位性

がある。

ざっくりに説明すると


不随性とは借金のカタ。
カタのもとになる借金のことを「被担保債権」(主人公)
カタを「担保権」(付き人)といい
主人公が消えれば付き人はいなくなる
Aが主人公を倒したら付き人も倒れる
ということ

随伴性
主人公が移動したら付き人もついてくる
BがAに借金して、その担保に抵当権をつけた場合に
Aが債権をCに譲渡した。
この場合い
債権(主人公)が移動したので付き人もついてくる
ということ

不可分性
簡単に言うと分けられないという意味
①BがAに対して1000万円貸した
②Aは900万円まで返した。
③Aはお金が無くなった。
この場合に抵当権を発動(競売にかける)することができる
ということ

物上代位性
簡単に言うと火災などで担保物(家など)が損失した場合に
火災保険金を差し押さえられるということ

※担保物が消滅したら抵当権もなくなる
なぜなら、物件(抵当権)は物に対する権利だから、物がなくなったら物件(抵当権)も消えるよねって話。
そのための救済処置が物上代位性である。

これを理解したうえで根抵当権に対して解説していく。


根抵当権をざっくりいうと
取引ごとにいちいち抵当権を設定するのは面倒だから債務の範囲(どういう取引をした場合に)と極度額(いくらまで担保するか)を決めて取引しようってこと。

根抵当権の具体例を出すと
A(家電メーカー)とB(電化製品の販売店)が登場人物である。

BからAに家電製品が欲しいと注文する契約をする(取引する)
代金は毎月末締め、翌月10日払い
この場合、AがエアコンをBに納品するごとに売掛金が発生する
例えば
Bが今日はエアコン10台(100万)明日はエアコン20台(200万)を注文する。


抵当権の場合では売掛金の発生ごとに設定契約と登記がいる。
毎月金額の支払いをしたら、そのたびに不随性によって抵当権が消滅する。
いちいち抵当権を設定するのはめんどくさいよね。
だから、根抵当権というものが生まれた。
というわけで、債権の範囲と限度額を決めていちいち抵当権が消滅しないように考え出されたのが根抵当権。

BのAに対する売掛金が毎月1000万円とする。
根抵当権は、金1000万円の枠をとって、その範囲で売掛金の全部を担保する。

民法398条の2
1項 抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を限度額の限度において担保しりためにも設定することができる

「限度額の限度」が枠である(主人公)
枠の中に出入りする不特定債権(付き人)
という関係が根抵当権の本質である。

上記で説明した不随性、随伴性がないということを解説する。

不随性がない
設定時に被担保債権が0でもOK
これからの取引のために設定できる
以後、取引が続くと考えられるため、売掛金を全額弁済しても消滅しない。

随伴性がない
①売掛金がXに債権譲渡されても、Xに根抵当権は移動しない。
→XB間の債権となるため。
②売掛金がYによって代位弁済されても移転しない
→YB間の債権となるため。
AとBの取引によって生じる債権だけを担保する。
①と②の場合、根抵当権の「枠」からはみ出して無担保債権となる

これが根抵当権の第一段階です、あまりイメージできませんよね。。
とりあえずルールだけ覚えてみましょう。


さて、次に進めます。
ここでは根抵当権の債権の範囲について解説します。

民法398条の2
2項 前項の規定による根抵当権の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引によって生じるものその他債務者との一定の種類によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない
民法398条の2
3項 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、手形上若しくは小切手等の請求権又は電子記録債権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる

まず、2項についてざっくりと、「包括根抵当権の禁止」である
AB間に「発生するすべての債権」を担保する根抵当権はあり得ない。
あくまでも、継続契約、取引が前提である。
→債権の範囲の意味

3項について。。ここは理解が難しい。
「特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権」とは取引を前提としない債権を意味する。(具体例は各自で調べてください)
「手形上若しくは小切手等の請求権又は電子記録債権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる」
これは根抵当権の債務者B(販売店)が、第三者Xに振り出した手形が根抵当権者Aにわたった結果、これを担保にするために根抵当権をしようすることができるということ
その限度で、一定の取引等を前提としない「包括根抵当」の性質を、根抵当権に持たせることが可能。

また、根抵当権の被担保債権の範囲について
根抵当権は確定した元本、利息、損害金の全部について極度額を限度として担保するというものがあります。
つまり、根抵当権は、限度額まで利息損害金を何年でも担保するということ。
だが、これを超えると1円取とも担保しない


次に進みます。

民法398条の4
1項 元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする

例、上記の状況でAとBという関係の場合、債務者をCに変更すると、根抵当権はAとC間の「家電製品によって生ずる債権」を担保する。
この場合、根抵当権は、変更以降に発生する債権、変更前に債務者Cが負担していたAC間の「家電製品取引」によって発生した債務をも担保する。
つまり、債務者の変更とは、枠そのものの移動である
また、AB間の債務については随伴性がないため、A→Bの債権は無担保債権となる。

じゃあ、CがBの債務を引き受けた場合どうなるのか?
この場合、この債権は根抵当権によって担保されるのか?
答えは、担保されない。
なぜなら、その債権は、AC間の「家電製品」によって生じた債権ではないため。
→CがBから引き受けた債務に過ぎない。
また、債権、債務者の変更は根抵当権の元本の確定前にすることができる
つまり、元本の確定後にはできない。
(元本の確定前とはまだ取引が行われてるという意味)


また、新しい用語がでてきましたね。
まず、元本とは、住宅ローンなどで、実際に借り入れた金額のことです。
そして、元本の確定とはざっくりいうと取引の終了を指します(正確には違う)が最初はその認識でOK(詳しくは下記で説明します)
また、根抵当権を消滅させる時点で未返済額がいくら残っているか、それをいつまでに返すかを明確にすることを、根抵当権の「元本確定」といいます
元本が確定するとどうなるのか?
大雑把に言うと、根抵当権の効力を失い、抵当権とほぼ一緒の効力になります。
つまり、根抵当権は、元本の確定前後で性質が大きく変わるということ。

これは根抵当権を理解するうえで重要なことなので絶対に覚えてください。
詳しく説明すると、確定とは、根抵当権と特定債権の結びつきが生じること。
つまり、新たな債権が発生しなくなる。
→根抵当権は被担保債権が主人公になり、抵当権とほぼ同じになる
=確定した債権(主人公)を担保するための根抵当権(付き人)となり立場が逆転する
※なお、確定前の立場は上記でも説明したが「限度額の限度」が枠である(主人公)枠の中に出入りする不特定債権(付き人)である
(限度額は残るため完全に抵当権と同じとは言えない)
なので、主人公(債権)がいなくなれば根抵当権(付き人)はいなくなるし
主人公が移動したら付き人も移動するということ
また、
根抵当権は、新たな債権の発生がある限りは、全体として確定しないという性質がある。
いったん確定した根抵当権を、確定前の状態に戻すという制度はない。
※根抵当権は登記との結びつきが強い
つまり、債権の範囲、債務者の変更を確定前に登記しなければ、その変更はなかったものとみなされる。
B→Cの債務者の変更を同意しても登記しなければ債務者はBであるとみなされる。

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