苦手な人が多い根抵当権を理解する②

①の続きから
(根抵当権が理解できないのは具体例がないからだと思う。。かと言って、具体例をあげろと言われても難しい。。)


さて、①のおさらいをしよう。
根抵当権には4つの要素がある

1、根抵当権者 誰が
2、債務者   誰と
3、債権の範囲 どういう取引をした場合に
4、極度額   いくらまで担保にするか

また、
不随性がない
随伴性がない
不可分性がある
物上代位性がある

「限度額の限度」が枠である(主人公)
枠の中に出入りする不特定債権(付き人)
という関係が根抵当権の本質である。

登場人物
根抵当権者A(家電メーカー)
債務者B(販売店)
債務者C(別の販売店)
ここからは+で
設定者X(物上保証人)が加わる。
物上保証人とは債務者にかわりに自分の不動産などに担保を設定するいい人


根抵当権の譲渡について(これは難しい、理解できてない)
場人物を
根抵当権者A(電機メーカー)、債務者をB(販売店)
設定者がX(物上保証人かな?)、D(別の家電メーカー)
の4人が居るとします。


Aは確定前の根抵当権をDに譲渡することができます。(枠そのものを移転)
そうすると、根抵当権は、AB間の債権は担保しなくなり、DB間の取引の範囲内の債権を担保することになる。
この場合、譲渡の契約はAD間で行うが、譲渡についてXの承諾を必要とすることになる。

根抵当権の譲渡には3つの種類があります。
①全部譲渡 変わらず根抵当権は全部を目的とする。
X    X
↓    ↓
A→→→→D

②一部譲渡 変わらず根抵当権全部を目的とする
X    X
↓    ↓
A→→→→AD

③分割譲渡 Dについての権利が消滅する
X     X
↓     ↓
A→→→→→AD

この場合、DがAの特定債権(債務者B)を譲り受けた場合どうなるのか?
→根抵当権によって担保されない
→その債権は、DB間の取引によって生じた債権だから。
DがAから譲り受けた債権に過ぎないといえる
しかし、その債権を根抵当権の債権の範囲としたい場合、根抵当権の債権の範囲を変更登記すればOK。

民法398条の5(根抵当権の極度額の変更)
根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない

元本の確定前後でもOK
枠の大きさを変更するため、利害関係者の承諾がいる
債権の範囲、債務者の変更は第三者の承諾はいらない


抵当権の処分について

民法398条11(抵当権の処分)
1項 元本の確定前においては、根抵当権は、第376条第1項の規定による根抵当権のしょぶんをすることができない。ただし、その根抵当権をほかの債権の担保とすることを防げない。
2項 第377条第2項の規定では、前項のただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適応しない

元本の確定前の根抵当権の根抵当権者が、これを譲渡、破棄、順位譲渡、順位破棄することができないと書かれている。
だたし、確定前根抵当が先順位の抵当権者から順位の譲渡(破棄)を受けることは禁止されていない。

「その根抵当権をほかの債権の担保にすること」
転抵当だけは元本の確定前においてすることができる。
また、確定前根抵当の被担保債権は、2項の規定は適応しないということ。
つまり、確定前根抵当について転抵当者の設定をうけても、元になる根抵当権の中身がないということがあり得る。

共同根抵当について

民法398条の168(共同根抵当)
第392条、第393条の規定は、根抵当権については、その設定と同一の債権の担保として数個の不動産に就き根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する

根抵当権は枠が主人公だから、複数の不動産を共同担保にするという概念がなじみにくい
抵当権なら特定の被担保債権を担保するための共同担保、と法律上当然に考えられるが、根抵当権は基本的にそれぞれの不動産に「別の枠」が載ってるだけである。
→共同根抵当として取り扱うためには、その設定と同時に「共同担保たる旨の登記」をしなければならない。
→1つの枠が、共同で各不動産に「載る」ことになる。
設定後の2つの根抵当権を「共同根抵当権」にはできない
また、「共同根抵当権」と登記したものを、格別の根抵当権にわることもできない。
その後はどうなるの?
共同根抵当権については、「債権の範囲」「債務者」「極度額」の変更、譲渡、一部譲渡は、その根抵当権が設定されるすべての不動産に就いて登記をしなければ効力が生じない。

例えば、甲、乙土地に共同根抵当権が登記されている
登場人物
抵当権者はA(家電メーカー)、債務者がB(販売店)C(別の販売店)の3人
AとBの間で、債務者変更の合意がされ、その後、甲土地にのみ債務者をCとする登記をした。
その後、乙地の登記をしないうちに、元本が確定された。
→債務者はBとされる
→この共同根抵当権は、AB間に発生した債権において確定してしまう。
(根抵当権の場合はこまめに登記が必要となる、当事者の意思と反する結果になる場合があるため)


民法398条の18(累積根抵当)
数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第398条の16の場合を除き、各不動産の代価について、各限度額に至るまで優先権を行使することができる

この場合、各不動産に設定された根抵当権は、相互に別物である。
→各根抵当権の債務者が一緒であれば、同時に競売になる場合がある。
→それぞれ別個の競売事件である
→債権の範囲、極度額も同一である必要なし
→1個の不動産に確定事由が生じても他に影響しない
なぜなら、相互に別物であるため。


共有根抵当権についてです。
確定前の根抵当権の共有の性質は、合有であるとされる。
(合有とは正確には違うが各共有者は、持分を潜在的には有すること)
→登記手続では共有であるのに「持分の登記をしない」ということが特徴
※不動産登記法では登記名義人が複数いる場合、原則として持分が登記事項となっている。
さて、それでは、AとB2名の共有根抵当権について、配当金の取り分はどうなるのかが問題です。
→同順位で弁済を受ける(それぞれの債権額に応じて)
だが、確定前に、割合を決めたり、Aが先に弁済を受けるなどを定められる
これを優先の定めといい、登記事項である。
(優先の定めは、確定前に定めろと条文に書いてあるが、登記しろとは書いていない、つまり、確定後に優先の定めを登記することは可能である)

では、共有根抵当権の元本確定前の譲渡ではどうなるのでしょうか。
AとBの共有根抵当権についてAは自由に譲渡することができるが、設定者とBの同意が必要になる。
→できるのは全部譲渡のみ。
→しかし、AとBが共同したら全部、一部、分割譲渡のすべてをすることができる。

根抵当権者、債務者が死亡、合併、分割したらどうなるのでしょうか?
まず(債務者)死亡の場合
根抵当権は、原則、確定する。
しかし、関係当事者が、取引の継続を望み、根抵当権の確定がヤダ!という場合があります。
→そのために、民法は、抵当権者と設定者の間で合意により定めた相続人が、相続の開始後に負担する責務を担保にする仕組みを作った。
→相続開始から6か月以内に登記しないといけない、合意だけではだめ!
→登記なしだと、相続開始時に元本が確定したものといえる。
また、登記をしないで6か月すぎると無効となる
なぜか。すでに相続開始の時に確定しているから。
いったん確定した根抵当権を確定前の状態に戻す手続はない!
また、登記した場合は以下の債権を担保する
→相続開始の時にある債務と合意による責務者が相続後に負担する債務

根抵当権者死亡の場合には、基本的に上記と同様である
1 原則として元本確定
2 相続開始から6か月以内に同意の登記をすれば継続できる
3 相続開始時にある債権、相続開始後に取得する債権を担保する

また、債務者兼設定者Bが死亡した場合も同じ考え方
ただし、登記手続上は、前提としてB死亡を原因とする相続による所有権移動の登記が必要!


つづいて会社Bが合併した場合
根抵当権は、原則として確定しない
なぜなら、合併による存続会社と継続して取引を行うのが普通だから。
この場合、根抵当権はつぎの債務を担保する
→合併時にある債務、合併後存続する債務者が合併後に負担する債務


しかし、設定者Xが、取引の継続がヤダから確定する!という場合がある。
→そのために民法は設定者からの「元本確定」の請求という制度を作った
(債務者からの確定請求は存在しない)
元本を確定させ、合併後存続する責務者に負担する債務について負担を逃れさせる道を用意した。
これは担保の負担を甘受する設定者の利益のための制度!
根抵当権設定者が合併のあったことを知った日から2週間、合併の日から1か月以内に設定者が確定請求をすれば、根抵当権の元本は合併の時に確定したとされる。
→確定請求は合併する債務者兼設定者の場合にはできない

根抵当権合併の場合
基本的には債務者合併のケースと同様
原則として元本は確定しない。
設定者がやだ!という場合がある
この場合、元本の確定請求できる
設定者が、合併のあったことを知った2週間以内かつ、合併の日から一か月以内の期間内に確定請求をすれば、元本は合併の時に確定する。
これは設定者と債務者が同一人物の場合でも同じ。

会社分割の場合
基本的には合併のときとおなじ。
しかし、会社分割の場合、元本の確定請求がない場合の根抵当権の担保する範囲が異なる。
1 根抵当権者XがYに分割するケース
根抵当権の担保する範囲
・分割の時に存在する債権
・分割後X、Yが取得する債権
2 債務者XがYに分割するケース
根抵当権の担保する範囲
・分割時に存在する債務
・分割後X、Yが負担する債務

以上が根抵当権者、債務者が死亡、合併、分割した場合の説明である。
(難しいよね。。次もなかなか理解に苦しむところ。。。)

元本の確定事由
基本的な考え方は、根抵当権の利益の保護だということ。
細かいのでざっくり説明してきます。

1、確定期日を定めた場合
その期日の到来を持って確定する

2、確定請求
①設定者の確定請求
確定期日の定めがない場合、設定から3年を経過すると設定者は確定請求できる。
②根抵当権者の確定請求
確定期日がない場合、根抵当権者はいつでも確定請求できる。

3、民法398条の20の確定事由
1号確定 根抵当権者が抵当不動産につき、競売、担保不動産収益執行、物上代位による差し押さえを申し出たとき
2号確定 根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差し押さえをしたとき
3号確定 根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続きの開始、滞納処分による差し押さえがあったことことを知った時
4号確定 債務者、根抵当権者設定者が破産開始の決定を受けたとき


根抵当権極度額減額請求

民法398条の21
一項 元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する責務の額と以後2年間に生じべき利息その他定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる

根抵当権設定者の負担を軽減するための制度です。
極度額が1000万円で100万円で確定した場合、新たな被担保債権が発生しないから、極度額の減額を請求していいよねって話。
また、共同根抵当権については1個の不動産について請求したらOK
→要件は、元本の確定後に限る、根抵当権設定者が請求すること
→債務者からは認められない
→しかし、設定者権債務者からの請求はOK

根抵当権消滅請求
これは、元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超える時に、一定の者が、その極度額に相当する金額を払渡し、供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる仕組み
→払渡し、供託は弁済の効力を持つ

この仕組みは根抵当権者にはありがたい制度になっている。
なぜなら、競売にかけるのがとても面倒臭いし、弁済を受ける範囲は極度額に限定されちゃうから。さらに裁判所によって根抵当権が抹消されちゃう。
→それを一定の者の方から「極度額を今すぐ払う」っていってくれるのはうれしいよね。
→一定のものとは、物上保証人、第三取得者、地上権、永小作権、対抗力ある貸借権を取得したものです。
→逆に請求できないものは債務者、債務者兼設定者、保証人、停止条件付第三取得者(停止条件の成否が未定である場合)です。
また、共同根抵当権については1個の不動産について消滅請求があった時に、根抵当権が消滅する。

以上が根抵当権の主な解説です。。難しいよね。。さらに不動産登記法も絡んでくるのでさらに難しくなってくる。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?