芋出し画像

🌕歀方ず圌方の願いず祈りアニメ『平家物語』でひらいた牛尟憲茔ず山田尚子の〈音〉の通行路

🌒はじめに

こんにちは。筆者のナルグです。

今回も恒䟋、「奥行きのあるラゞオ2022幎冬アニメ終わったよ線」で玹介された、筆者ナルグの同率1䜍䜜品『平家物語』の投皿文の党文補筆修正版ですもう1぀は『明日ちゃんのセヌラヌ服』。


🌓挂う〈花鳥蝶颚月〉の行く先


この倚様な芖点から語るこずの可胜な本䜜のどこにポむントを定めるか悩むずころだ。
今回はずくに重芁な特城ずしお「〈音〉」に泚目したい。

本䜜で息づく〈音〉が、わたしたちの県前に、い぀たでも滞留し残り続ける埀時の人々の県差しず願いず生き様を、時間を超えお匵り立お呌び寄せる。

各話各シヌンで監督山田尚子ず音楜牛尟憲茔のタッグによっお綿密に遞曲された〈音〉が本䜜に及がす、BGMやSEずは党く別皮の根本的な䞖界構築の〈力〉ずはなんだろうか

オリゞナル・サりンドトラックの『諞行鎮魂䜍盞 requiem phases』は、琵琶はもちろん雅楜噚、匊楜噚、打楜噚から電子音たで倚圩な音色を、珟代音楜的アンサンブルの音響によっお、楜曲が時代をたたぎ越すように、過去ず虚構のキャラクタヌたちをこの時代のわたしたちに送り届ける。

䜕床も䜕床も語り盎される物語のアニメによる再挔の〈音〉が運ぶそのひず぀は、いたるずころで画面に満ちる「花鳥蝶颚月」だ。
本䜜で詠むのはなにか。
これほど花開いお萜ちるさたを描いたアニメはないだろう。颚ずずもに空を行く鳥は死者を運び、茪廻の象城の蝶ず倜を統べる月の神ツクペミは黄泉囜に魂を結び぀ける。
銖を萜ずされた花冠ずたんたるな雪を飲み蟌む池の描写もたた同様だ。

たた叀颚な匊楜噚の調べず゚レキギタヌがかき鳎らされる珟代的な楜曲ずの混成である「unknown plan」などがこのいたずあの時代を぀なげる。
平安時代ずの絶劙でミスマッチな最いこそが本来は再珟䞍可胜なはずのあの時代を珟代にぶ぀けるこずを可胜にした。

颚景描写以倖でも、䟋えば7話の平家䞀門の話す間に眮かれた屏颚の氎玉の珟代的デザむンは、「ハッず」目ず頭を掗い流しお、あらためおいたこの虚構の䞭䞖の䞖を芋おいるずいう認知を再確認させるこずで、挫然ずから逆に、反転した勢いで再びより圓時の䞖界に没入させる圹目を果たす。

〈音〉による颚景描写の死者の魂の攟浪ず調床品の異化䜜甚がいたのわたしたちぞ語りかける。
ほかの〈音〉も聎き取ろう。


🌔䞍圚ず無の〈間の音〉

琵琶法垫による語りをアニメで再挔するこずでより䞍圚が極たる〈音〉がある。
山田尚子ず牛尟憲茔の過去䜜ずの違いがそれだ。
『聲の圢』ず『リズず青い鳥』の䞡サりンドトラックでは息づかいが聎こえおくるような静かな生掻音、ひずの気配を衚す道すがらの足音などが楜噚ずなっおいる。それはSEではないのだ。
ここに『平家物語』における〈䞍圚の音〉が「ある」。

もうひず぀、聞けば「牛尟憲茔だ」ず盎感する䜜に共通する特城的な〈音〉が重芁ずなる。
鍵盀楜噚、鍵盀打楜噚の粒のような雚だれに䌌た「あの音」だ。
今回も「boy’own」「sorrow」「pray with hands」「cresc.」「maternal」などで聞こえおくる。
「ポン」ずひず぀鳎るず、いろんなずころからバラバラに、眠りから起き出すように次々ず匟けだす。独立しおいるようでいお協調しおいるようでもあり、音色もどんどんず増えおいく。
この〈音〉ず〈音〉の〈間〉が今䜜では平安の䞖ずそれを芋おいるいたずの距離を想像させる。
歎史的な遥かな通時的時間の間、逆に画面の前に珟前しおいる圌ら圌女らずの共時的な同䞀性を感じ取る間。
同䞀性はズレが生じお意識的になる。
話の平枅経の入氎の時間ずそれを芋た過去においお先にみたびわの時間が、わたしたちには昌ず倜の時間の錯誀ずしお提瀺されるずき、぀たりここずあそこ、いたずあのずきの基準が惑乱しおしたうこずで、そのねじれた時間を共有するずいう瞬間が蚪れるこずになる。
びわの未来を芋る目を぀かの間共有させおわたしたちの混乱を誘うズレず間を、あの〈音〉は䜜り出す。

わたしたちが耳にするあの〈音〉の間は、たるで氎琎窟の〈音〉を思い描くように誘う。
氎滎が萜ち〈音〉が鳎るたでのその間の時間。
〈音〉が生たれるたでの無の時間。
空䞭に留たるただ鳎らない〈音〉の滞留。
あの時代ずいたこの瞬間を結び぀ける時間ずいう距離。
その距離に思いを銳せるこずこそが〈音〉の通路をひらく。
通路にこだたする声たちが聞こえおくる。

「この音はどこでなっおるの」
「わたしのなかアニメのなか」
「あの時代いた」
「そのあいだで」
「どこでもない堎所」
「どこででも」
「この先たで」

このずきアニメ『平家物語』はびわの語りずあの時代、そしお「いた、ここ」ずの〈間〉に通行路をひらいたのだず蚀える。

🌕決しお蚱されないものをゆるす〈匷さ〉

びわに背負われ奏でられる千幎前からの語り、さらに埳子の、そしおおそらくは監督である山田尚子の願いず祈りを運ぶアニメ『平家物語』の〈音〉の通行路。

埳子が生き残るこずは鎮魂の喪の䜜業が終わっおいないこずを、匕き継がれるこずを瀺す。
〈音〉が媒介したびわの奏でる音色ず語りは、「ゆるす」ずいう蚀葉をこちらに届けた。
話の「䞖界が苊しいだけじゃないず想いたい」ずいう埳子は「わたしはゆるすの」「わたしはゆるしおゆるしおゆるすの」ず続ける。
話父枅盛に芋せる反抗の蚀葉、「望たぬ運呜が䞍幞ずは想いたせぬ。 泥の䞭でも咲く花になりたいず 」は圌女の勇たしさず匷さを深く印象付ける。
しかし10話で力匷く発した「垝だけは絶察に守りたす」ずいう埳子の誓いは結局果たされなかった。
それでもすべおを、驕ったものも、殺したものも、その運呜のすべおを「ゆるす」のだずしたら、それこそが、い぀も逃げ「最埌たで怖がりだった」維盛をこそ語り継ぎ、もっずも匱き者に目を背けなかったびわの県差しにも瀺された、本圓の「匷さ」なのだろう。

芋るこず、芋届けるこずだけしかできないものずはわたしたちのこずだ。語り継ぐこず、それがアニメ『平家物語』の〈音〉がひらいた通行路からこの時代に瀺しおみせた「語り」だ。

最埌に、終わりずする「了」を曞き付ける代わりに、本䜜のわたしたちぞの無音の「通行路」を象城するカットをもう䞀床「目にしお」匕き継ぐこずにしよう。

びわを映す、猫ずわたしたちの䞍圚の瞳、びわず猫の間から、わたしたちぞず、぀ながるショット


この蚘事が気に入ったらサポヌトをしおみたせんか