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横浜の地下鉄が、私にとっては怖かった。


大学生の私は故郷を離れ、憧れの地・横浜にいた。

人をうまく避けられなくて、何度かぶつかって、目も見ず謝りながら、新しい家になんとか辿り着いた日を覚えている。


はあ、地下鉄沿線にするんじゃなかった。
窓には冴えない顔が映ってしまう。

だいたいそんなことを思いながら、4年間通った。


駅員さんが一人ひとりに挨拶する暇なんてない。

下っても下ってもホームに着かない。

ホームドアが先に閉まって、

早めにアウトを告げられる。

乗り遅れた人に再びドアが開くことなんてない。

電光掲示板を見るまでもなく次の電車が到着して、

わたしたちを正確な時間で、生きる街に近づける。

1年、2年…毎日繰り返していくと、
怖さもだんだんなくなって、
次の電車が10分後でもイライラしていた。


もうあの頃のわたしには戻れない。
戻りたくても戻れない。

地下に深く潜る度にそんなふうに思っていた。


横浜の地下鉄は、私にはやはり怖かった。


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