あなたも10年後は長袖と長ズボン

緊急事態宣言が解除されて、停滞していた経済を回すべく、躍起になって手が打たれている。ものすごく人ごとのように策は打たれ、驚くような速さで感染者が増えているのを尻目に、不透明な明日が続いていゆく。

そんな毎日の少し前。ようやく自粛生活から解放され、久しぶりに仲間と釣りに出かけた。
といっても県外への移動は憚れたので、いつもとは違う県内への釣行となった。釣るのも久しぶりなら友だちと会うのも久しぶり。感染のことは気になるので、マスクや消毒等、以前までの釣りにはもっていかない物も準備しての出発となった。

その仲間たちと知り合って、ちょうど10年ぐらいになる。いつもはのんびりと釣るイメージの釣りではない。アクティブに獲物を狙いにいく。けれど、その日ばかりは話にも花が咲いた。10年あれば結婚もして子どももいる。5、6年前では考えられない言葉が次々に飛び出す。

かわいい子供服を見かけるとつい買ってしまう。
（パチンコを）全然打たなくなってしまった。
先輩（私のこと）が育休を取ったすごさがわかりました……。
身をもって知るとはまさにこのことだろう。私がちょうど彼らの歳ぐらいのときにもよく遊んでいたものだが、いざ自分たちがそのぐらいの歳になって、先輩のすごさがよくわかりました、とか。（これは喜んで良いことなのか！？笑）

彼らも大人になったものだとなんだか嬉しくもなった。
ふと気づいた。
さすがまだ若い彼らは、Tシャツに短パン。照りつける日差しもなんのその。その笑顔の方がまぶしく感じた。

「もう10年経つと長袖長ズボンで釣るようになるよ。」

日焼けを含めていろんなものから身を守るようになった私は、長袖長ズボンを誇らしげに見せ、笑いながらそう言った。
次の釣りは10年後なんて言わないでほしい。世の中が落ち着いて、ちょくちょくまた一緒に釣りに行きたい。
いつ服装が変わるのか楽しみにしながら。