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マルスとビーナス~神話に見る男性性と女性性

京都・東山にある京セラ美術館に行ってきました。
ルーヴル美術館展 愛を描く | 京都市京セラ美術館 公式ウェブサイト (kyotocity-kyocera.museum)

古代ローマから続くキリスト教文化・芸術における最大のテーマはと言えます。いや、世界中のあらゆるものがそうです。それも男性性と女性性の分離、そして、統合へ向けた痛みと情熱こそがすべての神話の土台にあるものです。神々と呼ばれる存在でさえ、このテーマにおいて苦しみ、葛藤し、様々なドラマを繰り広げてきました。


占星術における12の星座は男性性と女性性のメタファーでもあり、12ハウスを巡るサイクルの中に内なる統合が示唆されています。牡羊座~蟹座までは主体が「私」であり、獅子座~蠍座までは「あなた」、射手座~魚座までは「私たち」になります。


占星術やギリシャ神話にご興味がある方でしたら、楽しめること間違いなしの展覧会です。私も、期間中にもう一度訪れたいな~と思いました。特に印象深かった絵画がいくつかありますが、その中でも、興味深いニ作品を取り上げてみます。

パンとシュリンクス

山羊座の神話の主人公・牧神パンがニンフ・シュリンクスをわが物にしようと追いかけています。「力」を持ってしまい男性性の権化と化しているようなパンの抱擁から逃れようと、葦の影に走り込んだシュリンクス。水瓶を抱く神と他のニンフたちが彼女を葦の姿に変身させて守ろうとしています。


葦とされる中央の草たちが二つの世界を分けています。左上から右下に一本のラインが入っているかのように見えます。葦によって隔てられた左下は水瓶と聖なる水に象徴される精神性と霊性の世界、右上は獣臭漂うパンに象徴される物質世界です。


物質性の極みである10番目の星座・山羊座というサインは男性性の強さと力を自在に操ることができると同時に、男性性が持つ暴力性も最大値に至ります。山羊座の力がなければ進化ができません。私たちは今、内なる山羊座を抱き参らせることを求められているのではないでしょうか?自分こそが認められたい、思い通りにコントロールしたい、人より力を持ち優位に立ちたいという、私たちひとりひとりの内側に巣食う暴力的な男性性ーーです。


水瓶座時代の入り口に立つ私たち人類も、まさにこの絵画に表現された意識の構図の中にあると言えるでしょう。物質性の象徴であるパンと霊性の象徴である水瓶を抱く者。この両者の間には深い次元の川が流れています。ふたつをひとつに繋げるものは何でしょうか?その象徴が、森と泉の精である穢れなきニンフ・シュリンクスです。ここで、もう一枚の絵画を紹介します。

ウルカヌスに驚かされるマルスとビーナス

マルスは火星、ビーナスは金星ですね。右手から覗いているのはビーナスの夫ウルカヌス。夫に不義の愛の現場を見られてしまったというのに、(実際は見られていないなど諸説あり)ビーナスからは平然とした覚悟のようなものが垣間見えます。一方、強さの象徴であるはずの軍神マルスのこの表情、なんとも印象的ではないでしょうか。ビーナスの腕に抱かれたマルスはまるで無防備な少年のように見えます。マルスに象徴される男性性とビーナスに象徴される女性性の原初的真実の姿が、ここに描かれていると思われてなりません。


男性性は女性性に抱き参らされる存在ーーニンフ・シュリンクスも同じことを示しているように見えます。私たちの内なる女性性によって、男性性の暴走と傷を癒し、ふたつを統合することが水瓶座時代(アクエリアス)への入り口なのだと思います。


男性の性欲(男性性原理)は悪の要素を持つーーというお話があります。男性や男性性なるものが悪だという意味ではありません。男性性と女性性はそもそもひとつです。いちなるものが相別れたことにより、すべての分離が生まれています。つまり、陽の力はそれ単独で成熟することができないのです。陰の力が陽の力を抱き参らせることにより、ふたつはいちなるものに還り、循環を始めます。


地上の男性と女性の関係も同じです。すべてはメタファーとして、上にあるものは下にあります。女性の皆様!パートナーを抱き参らせることが地球を救う!と言っても過言ではありません。目の前のパートナーシップこそが、地球の学びの集大成でもあります。私はすべての女性にそのことを伝えたいのです。


他者を通じて、自己を統合していく学びは厳しいですが、聖なる泉のごとく甘く官能的でもあります。そして、その先に拡がる世界は無限大なのです・・・


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