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宝塚歌劇と小林一三と山羊座社会の終焉

阪神間で生まれ育った私は、小さな頃から、阪急電車が大好きでした。阪急電車とその沿線には海王星的な夢があります。まず、あの上品なマルーン色の車体。一般座席はモスグリーン、優先座席はボルドー。そして、シートは高級家具のベルベットのようになめらか。子どもの頃は、そのすべすべした手触りが心地よくて座席をよく撫でていました。車内には歌劇のポスターが貼られ、独特の世界観を醸し出します。



哀しいほどに無機質な単なる商業主義を超えて、美学とこだわりが存在しているという意味において、阪急電車は他の追随を許さない存在です。どこか遠方にでかけても、阪急電車に乗り込んだ瞬間、ああ~帰ってきた~と安堵感に包まれます。他では感じられない心地よさや癒しは、きっと阪急グループ創業者・小林一三(こばやしいちぞう)の原点にある想い、あるいは金星と海王星的ドリームが生み出したものなのだと感じます。



阪急が関西トップクラスのグループにまで成長したのは、何より一三の経営手腕によるものでしょう。鉄道を引く時に(始まりは現在の阪急宝塚線)その終点駅である梅田と宝塚に「庶民のアミューズメント施設を作り、それを基点に人を呼び込む新しい動線」を作り出しました。沿線には新興住宅地を作り、電鉄ありきの街を生み出していったのです。それは今でも日本の私鉄経営のモデルになっていると聞きます。



阪急宝塚沿線に住んでいた私は、片や宝塚ファミリーランドと宝塚歌劇、片や梅田の阪急百貨店がまさに「ゆめゆめしいアミューズメント」でした。数々の大切な思い出とトキメキ・夢を与えてもらいました。当初、彼の経営理念は「人々に夢と喜びを」というものでした。その教えが徹底されているからなのか、阪急百貨店の大食堂も庶民価格でしたし、阪急グループは現在もできるだけ値上げをしない方針であることが伝わります。



たとえば、神戸三宮から京都中心地までの片道料金は、阪急利用で640円、JRは1110円。神戸三宮から大阪中心地までは阪急330円、JR420円です。私の記憶が正しければ、宝塚歌劇観劇料金もあまり値上げをされていません。長い間、宝塚大劇場二階後方のB席は相当安い値段のままでした。それは一三の理念を反映したものであると聞いていました。



小林一三という人物は、庶民目線にこだわり、商売に夢や喜びを存在させるという美学を持っていたことは間違いないでしょう。しかし、それだけではあれだけの偉業を成し遂げることはできません。経済界で上り詰めるには、清濁併せのむことが絶対的に必要です。実際、一三は冷酷な顔も持っていました。邪魔な存在は徹底して潰す。お金と権力を使って、手段を選ばない一面を持っていたことは隠せない事実です。



私はそれを責める気持ちはありません。これまでの経済社会において、合理性を追求し、冷徹に利益を上げ続けることができなければ、誰が大規模な経営者になれたというのでしょう。そんな人は一人もいないはずです。そして、山羊座社会のモデルのような出生図を持つのが小林一三です。様々な苦労を乗り越え、太陽山羊座を完成させようとした生涯。時代的にも、経済優先で、何より豊かで便利な世の中になることを皆が善としていたのですから、まさに時代の申し子です。



1873年、一三は裕福なご家庭に生まれましたが、幼少期に母親が死去、父親とも生き別れています。頭脳明晰な彼はそもそも小説家を希望していたというのですから、芸術性や優れた美的感受性を持った方であったのでしょう。出生時刻はわかりませんが、太陽は山羊座、月は魚座です。太陽山羊座は経営者に最も多い生まれとされます。感情を入れない合理的判断が得意な性質。



山羊座太陽が土星と緩い合、冥王星とはトラインで、独立独歩の強い意志を感じますし、やはり相当な野心家で洞察力に優れ、ゼロから巨大なものを生み出す才覚を持っているでしょう。私にはアセンダントが牡羊座に感じられるのですが、もしそれが合っているならば、海王星がライジングスターになり、山羊座太陽が10ハウス・MC合です。(できすぎですねw)



しかし、これは特定できないので、アスペクトだけを見てみます。金星と海王星の良い面が強く、魅力的な人物であったことでしょう。ピュアな夢や美学を持っている一方で、やはり底なしの冷徹さも見てとれます。まるで天使と悪魔が同居しているかのようです。中でも、特に目を引くのがタイトな山羊座土星・牡羊座海王星スクエアです。



自分自身の夢や理念に多くの大衆を引きずり込み、まるで集団幻想の渦の中に投げ入れてしまうような人物像が湧いてきます。他者を圧倒して魅了するような強い理想を持ち、それを実現するためには黒いものでも白くしてしまうような抗えない魅力の持ち主。



今、取り沙汰されている宝塚歌劇団の特殊な在り様の根底には、この一三の理念や価値観が存在していると感じます。圧倒的カリスマだからこそ持ち得た「強い理想」が継承されていく中で、何らかのズレが生じてきた可能性も感じられます。大衆に夢を与えるために、そして、企業として利益を出していくために、何が何でも合理性を追求して「伝統と理念」に従うのだという支配的コントロールへと形を変えていったのではないでしょうか。



山羊座のネガティブさは組織(権威と権力)が個を殺してしまうことにあります。劇団内の正しさに黙って従うことが善であり、そのためには個人の感情や価値観など必要ないのだという、全体の空気に侵されるのです。軍隊はまさにそうです。そして、山羊座社会の中で成長してきたあらゆる集団や企業もそうです。学校もそうだし、これまでの社会そのものがそうでした。



でも、これも時代が必要としてきた在り方です。しかし、今、大きく時代が変わろうとしています。どんなに美しく、大衆に夢を与えるものであっても、誰かの犠牲の上に、誰かの大きな苦しみの上に成り立つものは、もういらないのではないでしょうか。



ひとりの命を大切にできないならば、水瓶座時代には進むことができません。集団幻想から目覚めること。個の尊厳を取り戻すこと。個の声を上げる、個の想いを取り戻す。奇しくも、それが時代を変えていく最大の力になることを今年の春分図が伝えていました。内部リーク・内部告発が時代を変えていくと読みましたが、その通りの流れです。

2023年春分図~内側からの革命|ユリシス (note.com)



私は宝塚歌劇、そして、阪急グループが好きです。新しい形で生まれ変わることを心から願っています。宝塚歌劇団の問題はまさに山羊座社会の終焉を示しています。いよいよの決定打に感じられます。潔く、自らすべてを認めて、方向転換を図る方が得策です。



この100年間、私たちはどこに向かって歩いてきたのでしょう。みんなで夢を見てきました。でも、それは作り物だったんです。誰かの犠牲の上に成り立つ幻想ではなく本物の夢を描きたい。誰も何も犠牲にしない世界を実現できるはず。闇をなかったことにして光を見ているのは、とっても虚しいことです・・・


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