詩集「詩、海、おにぎり」小見山転子(書肆ブン発行) 2023年に刊行された、小見山転子さんの第二詩集です。 (筆名を変更されてからは初の詩集になります) 現代詩手帖の投稿欄をきっかけに交流をもつようになった転子さんとの色々は、また別の機会にお話しするとして。 今日は、詩集「詩、海、おにぎり」の印象、感想などを書いてみようと思います。 詩と海とおにぎり。みっつを並べて置いてみたら、全く関係なさそうなものたちがゆるくつながって曖昧に漂い始める時。それは混沌が「詩」として立ち上
春 ほら見てよ カッコいいのがいい ってきみが言うもんだから 空がカッコよく晴れたよ すごくカッコいい 風もカッコいいよ 散歩中の柴犬が帰りたくなくて かいぬしさんとリードを引きあってる いやいやいやいやいや ってなるのカッコいいなぁ 疲れて歩いてたら 肩に鳥のふん落ちて来たひと 無条件にカッコいい そうやって 誰がどこでどうなって カッコよかったのかを知りたい わたしとか きみとか あったとしても なかったとしても 泣くほどでもなく 持て余すほどでもない きみがそういうも
物件 近いのがいい 駅にも市役所にも商店街にも 猫とか鳥とか 出会ってしまったなら そそくさと逃げてくのがいい 裁判所の上でさえずって そのまま月も掬われて 雨がやんだら 猫が路地から抜ける * 何回も来てたって それでもいいじゃん? 保護フィルムの上から 画面をかわいがって 憤りもせず 目を閉じて肺を開く 近いところに貼り付けた 一寸先の薄い闇と わたしのようなわたし * 満月の夜には 恋人から電話がある 近く近く近く ベランダから放つ話たちよ さあ あっけなく続いてゆく
あまり考えてないですけど、何かします。何か。