終わりがあるから美しく思える
今まで一度もそんなこと思ったことなかったのに、会社のエレベーターホールにきれいな西日が差すことに気づいた。
打ち合わせの帰り、デスクに戻る足を止めて、窓の形を反映して光が描いた幾何学模様をすこしだけ眺めた。
なんで今まで気づかなかったんだろう。
そういえば子どもの頃も、似たような経験があった。終業式の日、誰もいなくなった教室。床にワックスがけをするからといって、机はみな後ろに下げられていた。雑に消された黒板も、年季の入った机も、壁の画鋲のあとも、なぜかどれも美しく思えた。
今になってやっと気づいたけれど、それはきっと、終わるからこその美しさだったんだろう。二度と見られない景色かもしれないと思うから、美しさに気づく。
4年半も同じオフィスで毎日同じ景色を見ていたのに、あんなにきれいな西日を見たのは一度だけだった。
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