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ナジャメイクチャレンジ

時間があったらやろうと思っていたことはたくさんあって、その一つはドラァグクイーンのメイクに挑戦することだった。

彼女たちはまず一度、持ち前の顔を消す。そして自分の理想の姿をまとい、私たちに見せてくれている。

美意識という言葉では足りない、自己意識とプロデュース能力の高さ、それをエンターテイメントとして落とし込み、手の届くところまで来てくれるものだから、私はおのずとドラァグクイーンに憧れの気持ちを抱くようになっていた。

私の昔話にどれほどの意味があるかは分からないが、私の心がどうしてそう思うようになったのか掘り起こしたいので書く。(実際のメイクの話は2スクロールくらいしたら話してると思います。)


小学生の頃、美川憲一さんをテレビで見て、全てを手に入れている人だと思った。低音の重い音から独特のしなりまで聴いたことがない歌声で、お化粧や衣装も本当に良くお似合いだった。「男の人なの?」と母親に聞いたことはあったが、それは特に性別を知りたかったわけではなく、美川憲一という人を知りたくて聞いただけだったと記憶している。

中学生の頃はテレビでIKKOさんを見て、おじさんが努力でこんなにもゴージャスに美しくなるのかと衝撃を受けた。秘密を知りたくて本も買った。ただただ謙虚に自己をみつめ、必要のないものを幻のごとく消し去り、足りないものを美しく描き、自身を魅せる術を知っている人だと思った。

思春期の当時、それなりの自己肯定感は持っていたと思うが、どうしても自分がアイドルやモデルに憧れても、真似してどうこうなるという予想をたてることができなかった。

目指すべき姿がないまま大人になって、浮かない程度の流行を取り入れ、常識程度への修正をする作業としてメイクをしてきた。


ふと思うと、ドラァグクイーンのメイクやファッションはまるで異世界のように思想が違い、圧倒的な個としての美しさを、各々が極めていた。

生身の人間なのか?と疑うような肌感

毛ってこんな形になる?という1mmの隙もない眉

削ったり出したり、自在な骨格

360度どこから見ても美しい目

ぽってり肉厚でアニメのような唇

自由に描き足されるホクロ

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枠にとらわれず自分の好きなメイクやファッションで自分を魅せている。

しのごの言わずなりたい自分になっている。そこに強い憧れがあったのだ。


中でも私はナジャグランディーバさんのメイクが一番の好みだったので真似ることにした。

まず道具を揃えようと調べてみると、インタビューにはこうあった。

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なんと、家にあるものでできる。

STAY HOMEにぴったり、ということで友人とzoomをしながらアドバイスをもらい挑戦してみた。


工程は以下の通り。

(1)まず、眉毛や唇の色味をコンシーラーで消し去り、顔面を真っ新なキャンパスにする。

(2)眉毛を描く。

眉頭の始まりはいつもと一緒、眉尻はいつもの3cmほど上。本来の眉毛は出発点の位置決めとしてだけ使う。自眉毛に捉われず急角度を付けていく。しっかり縁取りをして中を塗りつぶし仕上げる。

(3)骨格を描く。

巷のメイクでいうシェーディングやハイライト。ただ、ここにはルールはない。印象派の画家になった気分で思うように影と光を入れていく。

ここで見慣れた顔面が大きく変わっていることに気が付く。

「私のメイクは顔面工事レベルよ」という人がいるが、こういうことかと納得した。これは冗談や笑い話ではなかった。間違いなく建設をしている。


(4)アイメイク

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瞼のこの線の仕組みが分からず、一番研究した箇所になる。アイブローペンを使い、線は眼球に沿って大胆に描く。失敗かもと怯えるが、迷わず震えずひと想いにいきたい。一重とか二重とか、腫れぼったいとか関係ない。瞼があればあのメイクはできるのだ。

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あとは主に、手持ちのアイシャドーパレットの使わなかった色、買ったはいいけど使い道のなかったグリッターなど、とにかく綺麗な色でこの半円を自由に塗りつぶす。塗り絵の要領。

そして大事な大事なつけまつげを2枚重ね付け。これはギャルがやっていると聞いたことはあったけど、本当に印象がまるで変わる。人間ではありえない人工感がプラスされてまたいい感じに。さすがに重くて目が少ししか開かなくなるが、それもまたセクシーだと思う。


(5)唇

手持ちのリップの中の最も濃い色を使う。縁取りをする際、元の唇はいったん忘れて、大きさも形も、何もかもを思い通りに描く。


(6)ホクロ

仕上げにホクロを描いて、アプリでゴリゴリに加工して完成。

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もとの顔は載せられないけど、こちらはどこに出してもいいくらい気に入っている。

今まで感じたことのない自信の扉を開けた気がした。

これは成績や成果、資格や賞など他人の決めた基準で生まれる自信ではない。いつでも自分の力で生まれ変われるという自信なのか、はたまた承認欲求なのか、まだそれをなんと呼ぶのか分からずにいるが、とても満たされた気持ちになった。


勉強や仕事の手を止め、自分と向き合う時間の多い今、新しい自信を通して自分と出会えるようなムーブメントが起こったらいいなと思う。


家にいるしかないし、変えられるのは自分くらい。これを機会に自分を遊び倒して新たな可能性をたくさん見つけておきたい。