スキーヤーも雪崩を誘発 前兆なく、退避は困難
(こちらは2021年1月に共同通信社から地方紙向けに配信された「千種ゆり子の空てんき」記事です。共同通信社からは許可を得て、そのままの文章でnoteにも配信しました。内容は最新のものでない場合があります。)
2020年12月中旬、真冬並みの寒波が到来。日本海の海面水温が平年より高かったこともあり、記録的な大雪となりました。群馬県みなかみ町藤原では、約30年の観測史上初めて、12月中旬に積雪が2mを超えました。
関越自動車道での最大2100台の立ち往生など、大きな影響をもたらした今回の大雪。昨シーズンは記録的な少雪でしたから、スキー場にとっては恵みの雪に…と思いきや、物事はそう単純ではありませんでした。雪が降り過ぎて安全確保ができず、終日臨時休業やオープン延期を余儀なくされたスキー場があったのです。コース周辺やスキー場までの道路付近で雪崩の危険があることが理由の一つだそうです。
雪崩には全層雪崩と表層雪崩の2種類があり、この時期に起こるのはほとんどが表層雪崩です。競技では速いスキーヤーですと時速100km以上で滑降するようですが、表層雪崩の最大時速は300km。発生してから逃げることは困難です。
雪崩の危険を考える際に有効なのが「雪崩の危険トライアングル」。雪崩発生には「不安定な積雪」「地形」「人」が関わっているという考え方です。驚くべきことに、日本で発生した雪崩の3分の2が人為的要因と言われています。人が不安定な雪の上を滑ることで雪崩が誘発されるのです。
真冬に発生する表層雪崩には前兆現象がないとも言われていますから、事前に気づいて退避することも困難です。スキー場のコース内はスキーパトロールなどの安全対策が行われていますが、決められたエリア以外は、さまざまな危険が存在します。コース内で滑るという基本を守り、スキーを楽しめたらいいですね。
(気象予報士、一橋大空手道部女子コーチ)
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