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共感と納得を生み出すネーミング法!共創アプローチで解決

 こんにちは。渋谷(しぶたに)です。
私はもともと事業会社でインハウスデザイナーをしており、現在はNEWhでサービスデザインのお仕事をさせて頂いています。

 このnoteでは、NEWhで活用したサービスデザインの思考法や手法を紹介しつつ、「実際にどう活用したのか?」「良かったポイント、また改善が必要なポイントは何か?」という”サービスデザインの現場の声”をリアルタイムでお伝えしていきたいと思っています。読んでくださった方が少しでもNEWhのサービスデザインの思考法や手法に興味を持って頂けたら良いな…というお気持ちで書いていきます!

 第一回目は、「ネーミング」です。こちらはサービスデザインで扱う領域としてはやや特殊ではありますが、タイトルにもあります「共創アプローチ」が非常に有益と感じた例でしたのでご紹介させていただきます。


顧客とチームの心を掴むネーミングの重要性

 ネーミングは、商品やサービスを顧客に選んでもらうための大切な第一歩です。しかし、本当に良いネーミングを作ることは意外と難しいですよね。
 子供の頃にレトリーバーを飼った時、家族を代表して名付け役を任されたのですが、家族全員が気持ちよく呼びたいと思える名前にしなければならない上に、友達に「うちの犬の名前〇〇やねん」と言った時に恥ずかしくないようにしたいな、などと悩み、いく晩もひとりで頭をうんうん悩ませていたことを思い出します。(今思えばそこまで悩まなくても良いと思いますが笑)
 ひとりで悩んでいても行き詰まりがちですが、実は「共創」のアプローチを取り入れることで、魅力的でチーム全員が納得できるネーミングを生み出すことができるのです。

ネーミングに求められる2つの要素 "共感"と"納得"

 ネーミングには2つの側面があります。1つは「顧客や社会から共感を呼ぶこと」、もう1つは「自社・チーム内で納得感を持てること」です。
 顧客や社会から共感を呼ぶには、伝えたい商品やサービスの特徴を、客観的に捉え言い換える、つまり”自分たちにしか伝わらない”を避けることが重要です。一方で、チーム内で納得感を持つためには、その名前が”自分たちが考えたんだ”という実感を持つことが重要です。人は他人からアイデアを押し付けられると、なんとなく気に食わない生き物だそうで、作家の中谷彰宏さんが記事の中で”納得できるかどうかは、「正しいか正しくないかではなくて、自分から出たんだという実感」なのです”と仰っているように、自分の中にあったことを代弁してくれたと感じられるネーミングこそが、会社の意思決定を後押しするのです。

 私が事業会社の中で働いていた時、あるブランドのタグラインを著名なコピーライターの方(かの有名な⚪︎ーゲンダッツのタグなども手がける)に依頼して書いてもらったことがありました。提案していただいたタグラインはどれも、顧客の視点と現代社会に対する示唆に富んだ素晴らしいもので、その中でも「これは」というものを意気揚々と決定者に持っていったのですが、「なるほどねぇー。でもなんか”しっくり”こないよね」と一蹴され、どれだけ案の素晴らしさを説明しても承諾してもらえなかったのを覚えています。この”しっくり”の感覚は、「自分から出たんだ」という”納得感”に近いのかもしれません。何度も何度もプレゼンを行い、決定者の意向を取り入れつつ修正を繰り返すことでようやく決定者の”納得感”が得られたのですが、逆にこのやり方では顧客や社会からの”共感”がないがしろになっていたように思います。

従来のアプローチではどこが課題だったのか?

「一人で一生懸命考える」の限界

 これまで、ネーミングはチームで内製するか、外部のプロに依頼するかのどちらかのアプローチがとられてきました。
 チーム内製の場合、チーム内のメンバーでアイデアを持ち寄り最も良いアイデアを選択します。この手法はアイデアにメンバーの愛情を反映させるためには非常に良いプロセスです。ただし、視点が自社・チーム内部に偏っているためアイデアの幅が狭く、選定したアイデアもチームでは共感が高かったのに、顧客や社会からは共感が低かったということがあります。
 余談ですが、昔お笑い芸人の「ライセンス」が番組の企画で「ザ・ちゃらんぽらん」に改名し、後に元に戻すということがありましたよね。身内では盛り上がったけど、ファンの心理を捉えていない名前はやっぱりアカンてことですね(ライセンス好きなので、個人的にホッとしたの覚えてます笑)
 一方、外注の場合は、外部のプロに依頼しコンセプトに沿ったアイデアを出してもらい選択します。その場合、先述したようにアイデアの質は高いものの、プロセスが見えないため納得感が持てずに形式的な承認しかされないことがあります。

 また、意思決定者とメンバーの間で判断基準が食い違うと、モチベーションの差が生まれてしまいます。さらに、商品やサービスのコンセプト段階からすでに決裁者との溝ができていると、途中で全体を見直さざるを得なくなることもあります。つまり、チームであれ外部であれ誰かが「一人(一部)が一生懸命考える」というアプローチは、結果としてアイデアに対する”共感”か”納得”のいずれかが欠けるというリスクがあるように思います。

"共創"アプローチの次世代ソリューション

多角的視点とアイデア量で「質」を担保する

 このようなネーミングの課題を解決するには、「共創」のアプローチが効果的です。共創では自社・チーム、顧客、社会の視点を持つメンバーが集まり、様々な立場から多角的にアイデアを出し合います。共感を呼ぶためには”自分だけにしか伝わらない”を避けると書きましたが、そのためにはメンバー自体に多様性を持たせることが最も効果的です。優秀なコピーライターの方は一人でこれらの視点を併せ持っていますが、予算が十分にある案件でなければなかなか依頼できませんよね。。ではどうするか。そこで、ひとりの天才に頼るのではなく、異なる能力を持つメンバーを複数集めることで多角的な視点を補い、アイデアの量を出すことで質を担保するということが必要になります。量が質を担保するためには、闇雲に200案を出すのではなく、コアとなるメッセージを決め最初の50案を生み出し、次の方向性を決めて50案を生み出し…というアイデアの積み重ねが重要になります。

メンバー全員の本当の"納得"を引き出す

 さらに大切なのは、共創プロセスを通じてメンバー全員の納得度が醸成されることです。コピーライターの方に提案していただいた時に”しっくり”こなかったのはなぜか。それは「自分から出たんだ」という感覚が持てなかったからではないかとお話しました。共創アプローチでは時には意思決定者も巻き込みながら、多様なメンバーが自分の時間と能力を使ってアイデアを出し、選考にも関わることで、より真剣にプロジェクトに向き合うことができます。加えて、思考のプロセスを可視化し共有することにより、具体的なフィードバックやアイデアの創発が可能になり、残った案に対する納得感を生むことができます。この納得感は、最終的な意思決定の際に熱量となり、更なる議論やブラッシュアップを後押しするのです。

顧客とチームの熱量をつくる最高のネーミングを手に入れよう

 優れたネーミングは、商品やサービスの成功に大きな影響を与えます。共創のプロセスを取り入れることで、多角的で質の高いアイデアが生まれ、かつ最終的な決定に対する全員の納得感を高めることができます。ネーミングの課題を抱えている方は、一歩踏み出して共創のチカラを借りてみてはいかがでしょうか?

 次回はどのようにネーミングを共創アプローチで進めるのか、実際に作ったデザインプロセスと得られた結果に対する示唆をお伝えします。次回も読んでみたいなと思った方はぜひ「いいね」ボタンをお願いします!



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