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観劇記録(月の獣)

週末に東京で月の獣を観劇してきました。

なので、感想を少々書きたいと思います。

この舞台は、登場人物が4人という少人数で、時間は、大体2時間半(休憩時間15分を除く)。内容は、ざっくりいうと、アルメニア人虐殺ということが祖国であり、この虐殺により家族を亡くした若い男性と女性が亡命先のアメリカでどのように家族になっていくか?というものです。


印象に残ったことを以下に書きます。

・セタ

孤児院から人違いで、アメリカにアラムと結婚するためにやってきた女性。一番最初の登場シーンでは、女性というよりも女の子という感じで、心細さとかがすごく伝わってきました。セタという人物は、とにかく弱さもあるけれどもとても意志の強い芯のある女性。何事も自分で選ぶという強さをとても感じました。彼女が家族を亡くした背景もかなりエグくて、わたしは「うぇぇぇぇ」となってしまい、心が痛かったです。そんな背景を持ちつつも、明るさを失わずにチャーミングな姿には複雑な気持ちになりつつも好感が持てました。アラムの理想の妻像の押し付けにも時にじっと耐え、ある時は、きちんと意見をいう。そんな姿に素直に「すごいなぁ」と感じました。わたしは、嫌われることを気にしたりして、なかなか意見を言うということができないので。

・アラム

セタを結婚するためにアメリカに呼んだ男性。写真家。自分の理想の家族像をセタに押し付ける。今で言う、モラハラ夫。全然、セタと向き合おうとしない。途中、セタにいくらなんでも言いすぎな場面があって、本当に「コイツ、マジであかん。クソ腹がたつ。こんなん離婚だ!!!」と思いました。眞島さんは好きな俳優さんなんですけど。物語の終盤になって、やっとアラムが抱える悲しみがわかり、ちょっとだけ「この人にも色々あるんだ」って思いました。あと、とても感覚的な話だけど、なんだか悲しい人だなぁと感じました。


・アラムとセタという夫婦

最初から物語の終盤まで、向き合うことができない夫婦。特に最初のほうは、ママゴトを見ているみたいでした。同じ宗教を信仰し、同じ様にアルメニア人虐殺で、家族を失くしているのですが、まったく違う。起こった事実だけを見れば共通点があるのに、こんなにも人は違うのだなぁということに気がつかされました。セタは一生懸命にアラムとの距離感を縮めようとするんだけど、アラムは全然セタのほうを見ようとしない。自分の理想の家族を作ることや世間的な権威に目がいってしまっていて。わたしは、いやいや自分の妻にもっと向き合おうよと思いました。特に二人には子どもができなくて、そのことについて話している2人のシーンは、心が痛くなりました。アラムとセタは年が4つ違うんだけど(アラムのほうが年上)、アラムのほうが幼く見えました。

物語の終盤で、やっとアラムが自分がどのようにして虐殺から生き延びたのかということをセタに話しました。このシーンをみて、ここでやっと2人は初めて向き合うことができたんだと感じて、やっと家族としてのスタートラインに立ったんだと思いました。特にラストシーンは、本当にウルっとしてしまいました。だって二人はやっと夫婦に家族になることができ、そのことを象徴するシーンだったので。できることなら、このラストシーンから始まる物語が見てみたい。


・ヴィンセント

物語の後半から登場する孤児。セタが家に呼んで、ご飯を食べさせたりと世話をしてました。ちょっと生意気な感じだけど、無垢さを持っていて、可愛かったです。この子がアラムとセタの元にやってきたからこそ、アラムとセタが向き合うことができたんだと思います。アラムとセタには子どもがいないので、この子の世話をすることはセタにとって満たされない何かを満たす役割を持っていたと感じました。彼もまた心に傷を持っているんだけど。


・感想

家族とは、人と人とが繋がって作り上げていくもので、そこにはそれぞれを思いやる心や時にぶつかることを恐れない心が必要なんだなぁと感じました。これは、家族だけでなく職場や友人関係にも言えることなんだと思う。家族になると「わかってくれるだろう」とか思ってしまうけど、近い関係性だからこそ、言葉にして伝えることをしないといけないのかなと思いました。当たり前のようで難しいけど。

月の獣って何かなぁって思ってたんですけど、月食のことなんだそうです。




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