一枚の写真から
ここ数年、中国のギャラリーとお仕事をする機会が増えてきた。残念ながらコロナが始まってしまったので、個展があっても現地には行けず、作品だけを送る日々。そんなことだから中国に行きたい熱が高まっていた。
つい昨日のこと。中国は蘇州市から、とあるギャラリーのオーナーが、通訳と共に我が家に打ち合わせに来てくれた。
私、すっごく中国に行きたいんですよ!と、ここ数年読んだ中国関連の本を2人に見せていると
「なぜそんなに中国に興味があるのですか?」
と聞かれて、う、と詰まった。
歴史や文化に興味があります…それになんだか懐かしい感じがするところも好きですねぇ、なんて曖昧に答えてしまったんだけれど、そういえばいつからこんなに中国に興味が出てきたのかと考えてみて、ふと、思いあたったことがある。
2019年、ウズベキスタンに向かう飛行機に乗っていた。韓国の仁川空港経由で、飛び立つとひたすら中国の上を通過するルートだった。
夜になると、雲の隙間からときおり大きな街の明かりが見えた。遥か上空からでも街の大きさが分かる。ずっと山ばかりのエリアと大きな街が、交互に現れる。
でも私は、あそこに行くことはきっと一生無いんだろうな、窓を見下ろしながらそう思った。
私が見ていたのはおそらく中国の地方都市の街明かりだった。北京や上海などにはこれから行く可能性があるけれど、日本でだって行ったことのない地方は山ほどある。ましてやこの巨大な中国の地方都市に行く機会は、そうそう無いだろう。
でも私は、自分とは重なり合わない世界が確かに存在することに、なんだか安心してもいた。むしろそういう世界に触れたくて海外に旅に出ているふしもある。
ウズベキスタンの旅から帰ってきて、iPhoneで撮った写真を見返していたら、機内から撮った写真の一枚に「新疆ウイグル自治区」と記されていてビックリした。新疆ウイグル自治区という地名だけは、ニュースなどで知ってはいた。でも遠い遠い出来事の一つとして、自分と結びついていなかった。
でも、確かにこの眼で見たんだ。遠い上空からだけど。
そうしたら何故だか「行ってみたいな」と思ったのだった。自分とは関係のない場所だと思っていたのに。iPhoneで撮った一枚の何でもない写真が、私と中国の接点を作った。
いつか行こう。あの大きな街明かりの中に潜ってみよう。そしてその時は、近づいていると思う。
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