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「アンケート」の数値に隠されたもの

人事の仕事で、意外と多いのが「アンケート集計業務」だ。研修の受講満足調査、内定者が決まった後の面接官や応募者の満足度調査。近年は、従業員による人事制度、上司、部門など会社全体への満足度調査も定期的に実施している企業も少なくない。各項目を5段階で評価してもらい、集計をする。各部署、年代別、役職別に平均値を出し、前年、平年と比較したり、部署単位、同業他社もしくは他業界との比較をする。

個人的には、

「アンケート数値=みんなの本音、総意」だと思っていない

なぜなら、その測定方法が、非常に曖昧だからだ。まず、5段階評価で、「不満」、「やや不満」、「普通」、「満足」、「とても満足」、この5つそれぞれに、どれだけ厳密な違いを意識して各人が回答しているだろうか。

「不満と満足」の二択は、明らかにわかります。ただ「やや」だとか「とても」は、人によってだいぶ感覚が分かれる。例えば、私は「こんな経験はめったにしたことない!」という場合のみ、”とても不満”か、”とても満足”と厳し目につける。だが、「極端な評価を避けたがる人」もある一定数いる。「色々あるけど、みんな頑張っているだけだし、仕方ないよ」と、”優しい評価”をして、ほとんどに「普通」をつける。どんな基準だろうが、結果の上では、同じカテゴリーで集計される。

こうした定量化は、非常に簡単で分かりやすし、説得力がある。だからこそ、「定量化=コメント」も加味した分析がもっと大事だと思う。1-5段階に自分の評価をつけるのは簡単で、コメント欄なんて、正直めんどくさい。多くの人が空欄で出す。つまり、逆の見方をすれば、たとえ少なくても、コメント欄の内容がネガティブであれ、ポジティブであれ、「是非言いたい!」という情熱、愛があればこそだ。集計された数値に秘められた「それぞれのストーリー」が1つ1つあり、たとえ厳しい意見でも、真摯に受け止める価値がそこにはある。

カレッジでマーケティングの授業の際、先生がこんな話をしたことをよく覚えている。ふらりと入ったあるカフェのトイレがとても汚れていた。その時の客の反応は4つだという。

①黙って立ち去り、2度とその店を訪れない

②自分の友人や知人にだけ、その店の不満を話す

③SNSなどで、自分の友人や知人以外にも不満を話す

④その店の人に、自分の意見を伝える

店にとって、一番いい客はどれか?

アンケートの数値の良いところだけを加工して社員に公表するのではなく、ありのままの結果を伝える。そして良かったことは、引き続き継続されているのか、良くなかったことは、どんな対策を講じ、どう変化していったのか、それを追求していくことが、アンケートの結果以上に、社員一人一人の満足を上げると、私は思う。

追記:hesoさんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございました。

「人生経験の引き出し」がいっぱいあります。何か悩み解決のヒントになる話が提供できるかもしれません。