命令は最終手段

最近は、PCの起動時間などにより、誰が何時から何時まで働き、何時間残業をしているか、容易にわかるようになった。36協定も認知されつつあり、労働時間、残業時間が多い社員、並びのその上司へ人事から連絡が行く、「労働時間を守ってください。残業を減らしてください」と。その上司は、その社員にこう言う「残業するな」と。

労働時間が増える、残業が増える大きな要因は、「業務量が多い」。その一言にだいていは尽きる。では、なぜ労働時間は増えるのか(もしくは減らないのか)。それは、ここのケースによるだろう。受注が増える、新たなプロジェクトが立ち上がる。でもメンバーが増えない。必然と一人分の業務量が増える。つまり、業務量と適正人数が合っていない。もちろん、業務量が増えたと同時に人員を増やさればいいが、このご時世、そうは簡単にいかない。だから今いるメンバーがなんとかしかねればならない。だが、人事は、上司は、「残業時間を減らせ」というだけで済ませることが多い。

別の言い方をすれば、「仕事の仕方が悪いから長時間労働になる、それは個人のスキルの問題」に事に過ぎない。そういう場合もあるかもしれない。果たしてそうだろうか。

上司によっては、「どんな業務にどれだけ時間を使っているか、リストにして提出しろ」という。そのリストを作る事自体が、更なる追加業務であり、労働時間を長くさせる原因でもある。家事でもよく聞かれようになった「名もない労働」は、オフィスでもたくさんある。コピー機の備品の補充や発注、故障の連絡。出張や休暇のお土産を配布。担当者がいない問い合わせの代理対応。PCやソフトの使い方が分からない人への指導や代理操作。挙げたらきりがない。そして、こうした名もなき業務を生んでいるのは、状況を把握していない上司が多い。

命令をマネジメント業務ではない、マネジメントとは「何とかすること」

では、どうやって「何とかする」のか。

①聞く

労働時間、残業時間が多い人個人の言動の改善命令をする前に、まずは何が起こっているか、状況の把握する。その際、個人の聞き取りだけはなく、残業が多くない他のメンバーからも聞き取りはすべきだ。個人だけに聞き取りは、「労働時間が長い人が悪」という前提で話が進んでしまいがち。それでは、社員も本当のことを話そうとしない。もちろん、場合によっては文句ばかり言って、事実が把握しにくいこともある。だが、

文句とは、不満や問題提起の宝庫

問題の原因は決して一つではない。何事も複数の事象が絡まって、問題は起きる。だからこそ、事実確認は、複数の人からすべきだろう。

②リストを作る

どんな業務に、どれだけの時間を使っているのか、そのリストを作るのは社員ではない、上司だ。自分で業務のシュミレーションしてみて、いかに結果だけを横目で見て判断していたか、痛感するだろう。それにより、「この作業はいらない」「ここはダブルチェックが抜けているから、ミスが起きやすい」と実感するだろう。

③当たり前のことをやる

問題が把握したら、実態が実感で切れば、おのずと何をすればみえてくる。奇抜は解決先でなくていい。通常は、

当たり前のことが、当たり前にできていない

ことがほとんどだ。その際、あれをやれ、これをやれと、命令したり、説得してやらせても、必ず反発が起き、長続きしない。細かい方法は、社員達に自主性に任せればいい。

④見る

しばらくは経過観察だ。一定期間ごとに、どれだけ業務量が減ったといった定量化された数値をよく見ることだけでなく、個々人の健康面やモチベーションがあがったなど、「ストーリー」もよく見る。そして、総合的にどうなっているか、しっかり見る。

一部を除き、社員で手を抜いている人は、ほとんどいない。だが、問題が起きうると、誰か1人のせいにして「必要悪」を作ってしまうことがある。それが組織の恐ろしいところだ。個人への命令は、最後の、最後の手段であるべきだ。

追記:thinkalifeさんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございました。



「人生経験の引き出し」がいっぱいあります。何か悩み解決のヒントになる話が提供できるかもしれません。