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記憶の行方


記憶というのは不思議なもので。


見えない所に置いてきたはずのそれは、

ふわっ、と気をゆるめた途端、

そのことがあった、その時以上の大きさで、

溢れ出す事がある。


それが、

喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、

どんなものであっても、です。



ときどき私を襲う、溢れ出てくるあの感覚。



それは、


体中の感情が一点に集中するような、

体の真ん中あたりをぎゅっと押しつぶしていくような、


そういった類のもので。


さらには、涙が流れ出ることもある。



小さな小さな箱へ丁寧にしまい込んで、

それには鍵をかけて置いてきたはずなのに。


その存在は、もう忘れたはずだったのに。



・・・どうして?



もしかしたら、

どこかへ置いてきたはずのその記憶は、


気づかないフリをしてきただけなのかもしれないし、

ぎゅっと小さく丸めて、そこらに置いただけなのかもしれない。



そう、きっと、隠れていただけで、

すぐそこに存在していたんだ。



じゃあ、どうして姿を現すのだろう。


・心がそれを呼んだから?

・あの時と似た空気を感じたから?

・それとも、忘れたくなかったから?


よくわからない。


どんな理由があるにしろ、それらは突然姿を現す。

隠れたままでいてはくれない。

だから、驚くのです。



忘れかけていたのにね。



顔を見せたその記憶に、

気づかないフリを貫くのは難しい。



だって、溢れてくるから。



それならどうする。

またどこかへ隠しにいくには、はっきりとしすぎている。


行き場のない記憶は、

受け入れていけばいいのだ。

私の一部として。

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