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MRI(磁気共鳴画像)検査を受けて、人生について考えたこと

今年に入ってから頭痛が続くので、病院に行った。

アメリカにはある程度まで医療行為ができる看護士資格をもつ、Nurse Practioner(NP)という看護士さんがいる。年一回の健康診断なんかは医者よりNPのほうが予約が取りやすいので、NPにかかる人が多い。

私は今回初めてのNPにかかり、頭痛を訴えた。その場でテストされた後で「念のためMRIを受けて欲しいが、受けるかどうかは自分で決めてほしい」と言われた。

よく知らない人なので、誤診とか見落としとかによる訴訟リスクを恐れているのだろうと思いつつ、子供もいるしテストできることはしておいたほうがいいかと思い、受けることにした。

MRIは大きな病院付属の検査機関に行って受ける。

予約をしたら検査の前日に電話がかかってきて、料金の説明をされた。私の保険は1000ドル(約10万円)以下は自腹。その後は80%を保険会社が負担し、20%を私が負担するらしい。

1000ドルプラス負担分で私の負担は15万円ほど。ということは、全体の検査費用は35万円くらいなのだろう。

そこで係の人が言った事にひっくり返りそうになった。

「1500ドルのところを、今日全額前金で払ったら、25%引きになりますよ」と。

さすがアメリカや。医療検査に割引があるんや。

と感心したが、後で夫にこの話をしたら、

「それはかなりの割合の人が費用をちゃんと払わないからだよ。そのせいで医療コストが高くなってるんだから。ちゃんと払える人には前払いするインセンティブをつけて、できるだけ回収しようとしてるんだよ」と言われた。

確かにアメリカには、医療費を延滞したり、医療費延滞がもとで自己破産したりする人は多い。

そこまで行かなくても、大病院には必ず付属の非営利団体があって、治療費を払えない人の肩代わりをするシステムがある。

実際、夫は若かりし学生の頃、保険に入っていないのにスキーで膝を複雑骨折し2日間入院した。このとき約550万円の費用を病院付属の団体に払ってもらったことがある。こういう人の負担分を普通に保険に入っている人が払うので、医療費がインフレよりも高い割合で高騰していくのだろう。

そもそも救急車と手術と2日間の入院と薬代で550万円というのも凄いと思うのだが・・・ちなみにこれは20年前の話だ。

検査当日は金曜日。ドキドキしながら頭に「13日の金曜日」のジェイソンみたいな器具を付けられて、MRIを受けた。

車が一台吹っ飛ぶほどの強さの磁気を使い、色んな刺激を与えて脳内のプロトンを移動させて写真に撮るという検査らしい。

中に入ると様々な音程、大きさ、タイプの音が大音量で聞こえてくる。一体どういう仕組みなのかよく分からないまま、30分ほどで検査は終了。

そして月曜日。検査をオーダーしたNPから電話がかかってきて、結果が正常値を外れていたから、脳専門医を受診してくれと言われた。

結果のレポートも送ってくれたが、医学用語のみで書かれていて全くもって何を言っているのか分からない。

多分命に関わることではないようだが、この一件で、

「私の寿命はいくらくらいなんだろうか?」

「そもそも、肉体は元気でも脳機能が衰えたらどうするのだろうか?」

と考えることになった。

人生で、色々したい、色々なところに行きたい、と思っていたが、

もし1年後に死ぬとしたら。

1ヶ月後に死ぬとしたら。

明日死ぬとしたら。

と突き詰めて考えると、私は単に、子供達、夫、両親、友達、という周りにいる愛する人たちと、一緒の時間をできるだけ多く過ごしたい、そしてその人たちに幸せだと思ってほしいだけなのだ、と思い知った。

そして、寿命がこれからどれだけあるとしても、その願望を満たすために、全神経を傾けるべきなのだ。

なぜなら、それ以外に自分が欲しいと思っている事、たとえばもっと大きい家とか、もっと多い収入とか、行った所のないところに旅行することさえ、愛する人々と一緒にいられないなら、意味がないからだ。

人生を逆算して考える、というのは本当に難しい。人間は自分の最期なんて考えたくないから。でも、たまにこういうことがあって、自分に残された時間の希少さ、大切さを知るのはいいのかも知れない。



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