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相棒2

小さい頃は、狭い玄関先に焙煎機が置いてあった。

父はいつも、触ったらやけどするで・と

刺青のごとく腕に残るやけど跡をチラつかせ

子供たちを脅しまくっていたけれど

いや、自分が、してるやん

って言うか、どないしたら、そんなとこ、やけどすんねん父ちゃん・・

と心の中で突っ込みながら

ほぼほぼの人生を

この焙煎機と一緒に過ごしてきた。

現存する私の唯一の家族であり、大切な相棒です。

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そうそう、もう一人相棒がおりました。

シュロ竹。

まだ、父が若かったころ、お店の前には丹精込めて育て上げた

シュロ竹があった。

ある日、そのシュロ竹を、泥棒する輩がいたそうで、

父はその輩を、包丁を持って追いかけたそうで、

今なら、どっちが重罪かと言うと

どっちかよくわからん状況ですが

よっぽどのシュロ竹好きな父は、

何軒お店を出そうとも、とにかくお店の前にシュロ竹を置く癖があり、

未だにその、泥棒されかけた樹齢50余年のシュロ竹は

お店の前に鎮座しております。

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娘の私は、父ほどのシュロ竹愛はないまでも、

時折、いとおしく

時折、かわいがる。

そもそも、なぜ泥棒はこんなものを盗み、

そもそも、走って逃げる自信があったのか。

そもそも、父は、何ゆえにそこまでシュロ竹に魅入られたのか

もう、それは、昭和だから、としか言いようがない。

このシュロ竹は

毎日お店の前を箒で掃いていた小学生だった頃の私の

親孝行な姿をちゃんと見ていてくれていた。

死んだら、棺桶に一緒に入ろう約束している。

蜘蛛の糸ほどの親孝行を証言出来る唯一の生物だから。

もしも、この世に終わりが来たなら

もしも、誰かと心中する必要が出来たなら

真っ先に、このシュロ竹を抱きかかえる。

それほど、私は、

この、シュロ竹を

時折、愛し続けている。

銃刀法違反を犯すほどの深い愛はないけれど。

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