ゆり@大手町OL

大手町で働くOLです💼。「工場戦士」という経済小説を執筆中📚。鉄鋼業界を舞台に、新卒入…

ゆり@大手町OL

大手町で働くOLです💼。「工場戦士」という経済小説を執筆中📚。鉄鋼業界を舞台に、新卒入社した社員が成長する姿を描きます。日常の仕事や製造業のあるある話を織り交ぜた物語です。ぜひ読んでください!フォロー頂けると嬉しいです✍️✨時間はかかりますが必ずフォロバします❗

最近の記事

  • 固定された記事

経済小説「工場戦士」目次

目次 Episode1「新たなる門出」 Episode2「研修と帝都製鉄の歴史」 Episode3「ものづくり改善部門への配属」 Episode4「灼熱の安全教育」 Episode5「マイカー購入と歓迎会」 Episode6「初めての現場体験」 Episode7「リクルーター任務と最終面接の回想」 Episode8「初めての合理化」 Episode9「初めての出張」 Episode10「出張報告」 登場人物 佐藤敏夫:この物語の主人公。 蘭哲也:敏夫の

    • 工場戦士:Episode10「出張報告」

      出張報告のドラフト 敏夫は長崎製鉄所から神栖製鉄所へ戻ってきた。長崎での出張は初めてだったが、合理化の徹底ぶりや、現場の活気には驚かされることが多かった。その新鮮な経験をもとに、敏夫は出張報告を作成することにした。出張報告は、決められたフォーマットに沿って記載する必要があり、内容が求められるのはもちろん、報告書としての体裁もしっかり整えなければならない。 デスクに向かい、敏夫はパソコンに向かってキーボードを叩き始めた。 報告書を書き上げた敏夫は、まず指導員である桑田にチ

      • 工場戦士:Episode9「初めての出張」

        製鉄所におけるベストプラクティス 敏夫が所属するものづくり改善部門では、日々の業務に追われながらも、社内の変化を強く感じていた。三友金属工業と大和製鉄が合併したことで、社内ではお互いの情報交流が急がれていた。特に「ベストプラクティス」というワードが流行し、異なる製鉄所同士で互いの優れた部分を学び合う動きが活発化していた。 ものづくり改善部門では、各製鉄所の設備スペックや要員数、生産性などを比較し、どこが優れているのかを分析していた。敏夫は厚板工場を担当しており、同じく桑田

        • 工場戦士:Episode8「初めての合理化」

          工場長との会話 ある日、敏夫は久間とともに、厚板工場の皆川工場長を訪れることになった。ものづくり改善部門に所属する敏夫は、生産性向上という名目で工場の要員合理化のミッションも担っていた。これからの業務に対する責任の重さを感じつつ、彼は工場へと向かった。 一貫製鉄所と呼ばれる高炉を有する敏夫が働く製鉄所は、約1万人近い作業者が働いている。その中で、帝都製鉄の直営社員は約2000人であり、残りの8000人は協力会社と呼ばれる外注作業者から成り立っていた。 製鉄所の各工場は、

        • 固定された記事

        経済小説「工場戦士」目次

          工場戦士:Episode7「リクルーター任務と最終面接の回想」

          リクルーター採用の任務 ある日、敏夫と技術系で入社した同期たちが突然人事に呼び出された。何事かと不安に思いながら、敏夫は同期たちと一緒に人事部の会議室に向かった。 会議室には人事部の担当者が待っており、彼らに向かって穏やかに微笑んでいた。 「今日は皆さんに、リクルーター採用についてお話しします。」担当者が切り出した。 担当者はリクルーター採用の意義と目的について説明を始めた。「リクルーター採用とは、皆さんのような新入社員が自分の出身ゼミや母校を訪問し、会社の魅力を伝え

          工場戦士:Episode7「リクルーター任務と最終面接の回想」

          工場戦士:Episode6「初めての現場体験」

          検査ラインの現場観測 ある日の午後、敏夫は久間から声をかけられた。 「佐藤、来週、薄板工場のリコイリングラインの観測作業を行う予定だ。手が空ているなら手伝え。」 リコイリングラインとは、薄板コイルの品質検査を行う製造ラインのことである。薄板コイルは製鉄所で製造される鋼板を巻き取ったもので、自動車などの部品に使われる。その品質を確かめるためにリコイリングラインで検査を行うのだ。 「桑田、佐藤に観測方法を教えてやってくれ。」久間が指示を出した。 桑田は敏夫に説明を始めた

          工場戦士:Episode6「初めての現場体験」

          工場戦士:Episode5「マイカー購入と歓迎会」

          初めてのマイカー購入 敏夫が茨城県の神栖製鉄所に配属されてから数か月が経過した。独身寮から製鉄所までのバス送迎サービスも終了してしまうため、自分で車を買ってマイカー通勤を始める必要があった。週末に、同期の大磯慶次郎と一緒に中古車ディーラーを見学しに行くことにした。 店舗には様々な車が並んでおり、どれも彼らの心をくすぐるように輝いていた。 「大磯、どんな車を考えているんだ?」敏夫は興味津々で尋ねた。 「俺は昔から憧れてたスカイラインを買うことにしたんだ。中古で200万だ

          工場戦士:Episode5「マイカー購入と歓迎会」

          工場戦士:Episode4「灼熱の安全教育」

          安全教育 ものづくり改善部門に配属された敏夫は、先輩社員の小野田一郎から安全教育を受けることになった。小野田は厚板工場の精製ラインで係長まで経験し、その後ものづくり改善部門に移籍してきたシニア社員である。 ある初夏の灼熱のように暑い日、敏夫は製鉄所内にある安全教育施設で小野田と対面した。施設内には様々な安全装備や実演用の設備が整っていたが、外の気温と工場内の熱気が相まって、まるでサウナのような環境だった。 「佐藤、今日は俺が安全教育を担当する。しっかり覚えて帰れよ。」小

          工場戦士:Episode4「灼熱の安全教育」

          工場戦士:Episode3「ものづくり改善部門への配属」

          配属先での出来事 敏夫は、茨城県に位置する神栖製鉄所、生産企画部門の「ものづくり改善部門」に配属されることが決まった。研修を終えたばかりの彼にとって、この配属は未知の世界への一歩だった。緊張と期待が入り混じる中、彼は新たな職場へと足を踏み入れた。 「佐藤敏夫です。本日からものづくり改善部門に配属されました。よろしくお願いします。」 挨拶の場には、上司の羽柴、指導員の桑田、そして同僚となる鈴木や堀江、久間、さらにはシニア社員の小野田が揃っていた。敏夫は一人一人の顔を見渡し

          工場戦士:Episode3「ものづくり改善部門への配属」

          工場戦士:Episode2「研修と帝都製鉄の歴史」

          新人研修の始まり 敏夫は、帝都製鉄株式会社に入社して最初の一歩を踏み出した。彼を待っていたのは、ハードな新人研修だった。敏夫は同期の大磯慶次郎らと共に、その厳しい研修に臨むことになった。大磯は東洋大学経済学部を卒業したインテリであり、敏夫とは対照的な存在だった。 研修初日から、敏夫と大磯は製鉄所内での基本的な作業から始まり、次第に体力を要求されるハードなプログラムに進んでいった。ある日、研修メニューには30kmの歩行訓練が組み込まれていた。炎天下の中、重い装備を背負って歩

          工場戦士:Episode2「研修と帝都製鉄の歴史」

          工場戦士:Episode1「新たなる門出」

          卒業旅行 佐藤敏夫(さとうとしお)は慶洋大学大学院での研究生活に終止符を打った。卒業式を終えた後、彼は友人の蘭哲也(あららぎてつや)と共に、卒業旅行としてカンボジアのアンコールワットを訪れることにした。二人は古代の遺跡群を前にして、その壮大な景色に息を呑んだ。 「もう大学院生活も終わりだな」と蘭がしみじみと言った。 「そうだな。なんだか実感が湧かないよ」と敏夫は遺跡の石造りの塔を見上げながら答えた。「この先、何が待っているのか、少し不安だ。」 蘭は笑顔を見せて、敏夫の

          工場戦士:Episode1「新たなる門出」