「お友だちの定義って何ですか?」

「まりかさん、今日はランチを一緒に行ってくれて、ありがとうございました。
次は、まりかさんが行きたいと言っていた、アジアンフェスに行きませんか?
8月○日と△日なら、空いています」

昨日、お顔合わせをしたおいしいものが好きな黒クマさん。
会って1時間で、恋人つなぎをしてきたり、クルマで送ろうとしたり、ちょっとズレているけど、たぶん悪い人ではない。
でも、きっと一生、私の仕事を理解してくれないだろうし、全体的にお話を聞く力もゆっくりなようだ。

という理屈はさておいて、ピンとくるものがなかった。
アンタ、ナニサマのつもり? というお叱りが飛んできそうだが、仕方がない。

だって、それが恋なのだから。


本当はお食事をご馳走になったのだから、渋々交換したLINEに私からお礼をするべきだった。
でも、どうにも気が乗らなくて、そのままにしていたら、夜10時半すぎに来たラインが、お誘いメッセージだったというわけ。
もちろん、もうお会いすることはないだろう。
そのままスルーしてもよかったのだろうけれども、自分の中でもひと区切りと思い、鉄板のお断り文句を送ることにした。

「こんばんは。今日はランチごちそうさまでした。
黒クマさんとは、お友だちでいたいと思います」

おしまい。
次にゆこう。

そう思った。そのはずだった。

ところがである。

早朝、目が覚めると、深夜の打刻のある着信通知が、iPhoneの画面に映し出されていた。

「こんばんは。まりかさんにとって、お友だちの定義って何で…」

途中で切れてしまっていたけれども、私が婉曲的に表現した部分を文字どおりとらえての質問だろう。
ああ、イライラする。
この人、何でも正面から受け止めてしまう特性がある人なのだろう。
これが仕事であれば、私もていねいに説明する。
要するに、あなたとは恋人としておつき合いするつもりはないですよ、手をつなぐのも、助手席に乗ることも、ましてやキスすることも、あり得ないんですよ、と。
だって、それがソーシャルワーカーの仕事だから。

でも、これは仕事ではない。
まりかは、人として最低限の礼儀を尽くした上で、まりかの好きなようにすればよい。
微妙なことばの機微をとらえて、しっくりくる殿方と、まりかは一緒にいたいのだから。

だから、黒クマさんのLINEには既読もつけず、ゆっくりと非表示にした。
もしまた、メッセージが来るようなら、気は進まないけれどもブロックしよう。
私も何たって躁うつ病患者、白黒つけないと前に進めない性分なのである。


このマッチングアプリに登録したのは、たしか1月25日。
来週でちょうど半年になる。
息切れ、油切れしてきたところで、いったんお休みにしよう。
アプリを退会しよう。
お顔合わせしただけでも11人。
やりとりした人は、いったいどのくらいになるのだろう。
ひとつひとつのご縁に、きっと意味があるはず。
ゆっくり考える時間をつくるのも、悪くない。
さくらまりか、休戦宣言である。


*2023年7月16日の活動状況
・もらった足あと:11人
・もらったいいね:4人
・やりとりした人:0人
この時間になると、老眼鏡なしではスマホの文字が読めなくなってきた。
50歳、できなくなることを素直に受け入れなくてはならないお年頃だ。

サポートしてくださった軍資金は、マッチングアプリ仲間の取材費、恋活のための遠征費、および恋活の武装費に使わせていただきます。 50歳、バツ2のまりかの恋、応援どうぞよろしくお願いいたします。