チャリンチャリン太郎【毎週ショートショート参加作品】

 神社のアイドル猫、太郎に似せて招き猫が作られた。誰が言ったかその名はチャリンチャリン太郎。招き猫を振り、チャリンチャリンと涼やかな音が鳴ると願いが叶う。ジャリジャリ、ジャンジャン等と濁った音がするなら、それは叶わないという。
 そこに一人の気弱そうな男がやってきて、チャリンチャリン太郎を抱えた。
「お、重い」
 病み上がりのその男には持ち上げるだけでもしんどい様だ。
「にゃーん」
 モデルになった猫も応援にやって来た。
「僕は健康体になりたい!」
 チャリンチャリン……。涼やかな音色が神社の境内に響きた。
「やった……」
 びりびりと痺れる手で招き猫を下ろす。
「おや、顔色が良くないな。社務所で涼んでいきなさい」
 通りかかった神職が男に声をかけ、その後を太郎がチャリンチャリンと首の鈴を鳴らしてついて行く。
「ご利益二倍だ」
 社務所の椅子に腰掛けると、太郎が膝に飛び乗って早く撫でろと指を噛んだ。

※毎週ショートショートに参加しています。


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