シリコンバレーに旋風を巻き起こすテクノロジー領域の投資家Tiger Global(4/4)

Financial TimesによるTiger Globalの戦略に関する記事最終回をお届けします。
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Red Ferrari syndrome

Tiger Globalの投資はいつも計画通りに行くわけではありません。
4番目と6番目の未公開テック企業へ投資するファンドのIRRは、昨年末までで10%以下でした(フィー控除後)

しかしながら大きな収益を上げているファンドもあります。
Tiger Globalの未公開テック企業へ投資する5番目のファンドは、11億ドルの投資資金から8倍のリターンを産むことができました。中国のJD.com, Flipkart, Facebookへの投資を含むファンドです。
中でもJD.comだけで、2.2億ドルの投資が68億ドルのリターンを産むこととなりました。

これらの未公開テック企業へ投資するファンドは、平均で年間26%のリターン産んでおり、ロスを出したファンドはありません。

一方で、いくつかの国では大きな配当を行うことが難しいこともわかりました。この6番目のファンドから、8つのブラジル企業に投資した2.2億ドルは、85%を失うことになりました。
そしてその後この国への投資は縮小しています。

またインドでの投資では、「ミスは犯したが、多くの改善する機会も得ることができた」とTiger Globalは投資家向け資料の中で述べています。
インドでの投資は利益を実現化するまでに時間がかかっています。
公開株市場において、急成長するが利益が安定しないテック企業を受け入れるのに時間がかかっているためです。
Tiger Globalのインドでの投資の利益の大部分を占めるのはFlipkartです。2018年、160億ドルでウォルマートに過半の株式をセカンダリで売却した利益です。ウォルマートはまだ20%近くの株式を保有していますがFlipkartは早ければ今年中に上場させる予定です。

もっと長く保有すべきであった収益性の高い株式を売り急ぎ、バリュエーションを懸念して優良企業への投資を見合わせたことはミスである、とTiger Globalは述べています。

ただ、Tiger Globalがあまりに急成長しているため、彼らへの投資コミットを見合わせているという投資家もいます。
彼らのファームサイズであれば、たった120人の従業員ですが、マネージメントフィーだけで年間10億ドルを得ていることになります。

Tiger Global戦略のまとめ

4回にわたってFinancail Timesの記事をお伝えしましたが、少し細かい部分があり全体を見失いがちなので、内容をまとめてみたいと思います。(私の意訳も大いに入りますw)

未公開テックスタートアップへの投資において、Tiger Globalの投資スタイルは、伝統的なVCと一線を画している
・いい企業を早く見つけ、即オファー
 - DDには戦略コンサルを使う
 - 資金調達のタイミングじゃなくても投資条件提示
・クロージングに要するのは数日という超高速スピード (通常は1-2か月かかります)
・ハイバリュエーションでのオファー (なるべく安く入ろうとするのが通常)
・ボードシートは要求せず、日々の業務にもタッチしない (通常ボードシートの確保はタームに入れこみます)

上記を、圧倒的なファンドサイズで超少人数で実現していることが、他ファンドと一線を画しているといってよいでしょう。

記事中にもあるように、全ての国で成功しているモデルではなさそうなので、「どの国・エリアで」「テック企業の中でもどの市場で」戦っていくのか、がこのモデルのキーになりそうだな、と個人的には思いました。

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