シリコンバレーに旋風を巻き起こすテクノロジー領域の投資家Tiger Global(3/4)

引き続き、Financial TimesによるTiger Globalの戦略に関する記事をご紹介したいと思います。
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A new "religion"

Tiger Globalの近年の投資スタイルは他のファンドを困惑させています。日本のソフトバンクのように、投資候補先に対し、ほとんどデューデリジェンスを行わず、高いバリュエーションをつけるからです。
ソフトウェアやFintechといった分野で、有望なスタートアップに広くリーチすることを重要視しているためです。

ライバル投資家たちの中には、Tiger Globalのポートフォリオを未上場テック市場のインデックスのように考えているものもいます。
フードデリバリーのような白熱する市場においては、Tiger Globalは競合するスタートアップにも出資するからです。
これは従来のVCは基本的に避けてきたことです。

また、Tiger Globalは公開市場での投資から始め、その後未公開市場へも投資を行う"クロスオーバー型"のファンドの原型となりました。Altimeter Capital ManagementやCoatue Managemetなどがその例です。つまり、いずれ市場を圧巻する可能性を秘めた未上場企業に対し、競合よりも高いバリュエーションを提示し、投資するのです。

Founders FundのプリンシパルであるEverett RandleはTiger Globalについてこんな風に語っています。
「彼は、これまで長く支持されてきた、でも時代遅れのルールを破ることで、従来の典型的なVCとは違う戦い方をしているんだ」

例えば、Tiger Globalは、スタートアップが資金調達の準備をする前の時点で、投資条件を提示してしまうのです。
これは業界ではタブーとされてきたことです。
さらに、従来のVCとは異なり、基本的にボードシートも求めず、投資先のオペレーションにもタッチしません。
投資プロセスは迅速化されており、契約締結にかかるのはたった数日です。
Tiger Globalから資金調達をしたスタートアップの創業者たちは、この効率的なプロセスがディールを決めた要因のひとつだと言います。

Tiger Globalのこのやり方は、世界中で展開されてきました。
第2のAmazonやGoogleを探し求めて。
Tiger Globalの前幹部のYasinは、Amazon Alexaのランキングを調査し人気のウェブサイトを見つけると、マッキンゼーのコンサルタントにDDをしてもらい、すぐに創業者に資金調達の可能性についてメールを送っていたと言います。
「基本的に彼らは、調達したいラウンドで意味のある資金を投資してくれる可能性があれば、好意的に受け止めてくれます。」

この第2のAmazon探しは2003年中国で始まりました。
Sarsが大流行した後に訪れた中国で、Alibaba, eLong, Joyoの3つのeコマースカンパニーへの投資を決めます。
そして、2004年にはeLongはUS市場で上場し、JoyoはAmazonに買収され、すぐにリターンを得ることができました。
しかしながら、Alibabaが250億ドルのバリュエーションの時、4%の株式取得からは手を引きました。のちにこれは多大なリターンを得る機会を失うこととなりました。

そしてTiger Globalはロシアにも投資を拡大します。
Googleのような検索ポータルサービスを提供するYandexとMilner率いるMail.ruへ早期に投資しました。
また、Milner率いるDST Globalというテックファンドにも投資します。DST globalはFacebookが上場する2012年の3年前に、100億ドルのバリュエーションで2億ドル投資投資しており、Facebookに目をつけていたからです。
多くの投資家はこのバリュエーションは高すぎると思っていましたが、Tiger Globalはこれをセカンダリで2.9億ドルで買い取り、その後約3倍の価値で売却しています。

同時期、Tiger Globalはインド市場へも進出しました。
2006年から170件もの投資を行い、いくつもの最大の資金調達のラウンドを主導しました。
2014年には、インドのeコマースグループFlipkartの10億ドルの調達ラウンドを主導します。売上の3~4倍のマルチプルというハイバリュエーションは、競合の投資家たちに大きな影響を与えました。
しかしながら、Sequoia Capital Indiaのような競合投資家とは違い、Tiger Globalはな最低限のプレゼンスで運営しています。バンガローの従業員はわずか数人です。
2016年よりTiger Globalはインドでの投資を減速させていましたが、今年になってまたその勢いを取り戻しており、すでに29件の投資を行っています。彼らは、正しい市場で、正しい起業家が率いるビジネスを見つければ、躊躇せずに投資していくのです。

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