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化粧品会社が直営店舗の物販&カフェの運用をShopify一本でやってみた結果

こんにちは、化粧品会社でEC担当をしているユリです。

弊社は自社ECサイトでShopifyというカートシステムを使用しているのですが、これはもちろんEC、つまりオンラインのお買い物のためのシステムです。

が、Shopifyは「Shopify POS」というPOSシステムも提供しており、Shopifyと連携することによって、商品登録やポイント、プロモーションなどをECと店舗で一元化することができるのです!

つまり、Shopify上に商品登録などをしたら、それがPOSの方にも反映されるし、ECと店舗で共通のポイントを貯める&使うことができるし、クーポンコードも共通で使えたりするし、何かとめっちゃ便利なのです。

さて、本題に入りますが、弊社は実は最近路面に直営店をオープンしました。
自社商品の化粧品だけでなく、セレクトショップとして一部の他社商品も販売、さらにカフェも併設しています。
そしてそれらの運用を全部Shopify一本で行っています。つまり、Shopifyの商品一覧の中に、「ホットコーヒー」とかも入っているわけです。

飲食までShopifyでやっているケースは結構レアなのでは?と思い、また直営店をオープンするに当たっていろいろな発見があったので、今回はお店オープン劇を振り返ってみようと思います。

どうしてもポイントを共有したい!

オープン日から遡ること半年前、どのシステムを利用して店舗を運用するか議論になりました。

弊社はECでShopifyを使っている。そしてShopify POSというものがある!というわけで、これを使わない手はないんじゃねぇの?と、Shopify POSはすぐに第一候補に。

が、なんかいろいろと連携してすごそうらしいよとか、やっぱ日本のサービスが安心なんじゃないのとかいう理由で、国内大手POSサービスのスマレジも候補に上がりました。
このあたりに関しては知見のある人が社内にいないため、相当手探りでした。

スマレジとも面談はさせていただきましたが、主に以下の理由から、結局Shopify POSを選ぶことにしました。

・店舗とECで同じ商品を販売することが多いため、連動していると登録が一度で済むので楽である
・ShopifyでGrowaveというポイントアプリを使っているのだが、これを店舗でも共通で使える

とくに2つ目の点は非常に重要でした。
スマレジだとしても、アプリを使ってポイントアプリと連携させることはできるらしいのですが、弊社が使っているポイントアプリGrowaveは日本ではややマイナーなアプリのためか対象外だったのです。

店舗とECでカニバらず、かつポイントをひとつの手段としてOMO施策ができるようにするためにも、ここはどうしても譲れない部分でした。

見よう見まねでPOS導入

早速、Shopify POSを導入。
この辺は上司も手伝ってくれて一緒にやったのでやや記憶が曖昧なのですが、拍子抜けするほど簡単だった気がします。

店舗で使うiPadやiPhoneにShopify POSのアプリを入れ、いつも使っているShopifyアカウントでログインして連携するみたいな、ほんとそれくらいだったと思います。

当然ながら、商品情報や顧客情報がばっちり連携されていて感動。

ちなみに、Shopify上で商品登録する際に、商品ごとに「これはECだけで売るよ」「これはPOSだけだよ」「これは両方だよ」と設定することができるので、POSの方に表示されるのは当然「POSでも売る」と設定された商品のみとなります。(在庫管理も同様に別々でできます)

そして肝心のGrowave(ポイントアプリ)との連携ですが、少し手こずりながらも、サポートに問い合わせをしつつなんとか完了。

テストをした上司から、「Yuri san !!!!!! it works !!!!!!!!!!!!」という興奮気味のSlackが送られてきました。(彼は外国人です)

ちなみに、Shopify POSでは現金以外の決済をすることができないので、別のサービスと提携する必要があります。
弊社はスクエアというPOSレジシステムと連携し、現金以外にもクレカや電子マネー決済ができるようになりました。

自社商品だけを売る(ECと同じ商品を売る)場合は、もうここまでやれば割と店を開ける状態になるのではないでしょうか。

ただ、弊社の場合は「店舗だけでしか売らない」商品が大量にあったので、次はこれらの登録作業が待っていました。

厄介なセレクト品

自社商品以外のセレクトアイテムは、海外からの輸入品と国内商品が半々くらいで、合わせると100sku以上ありました。

で、この輸入品が超大変だった。

まず、パッケージに書いてある商品情報は当然全て外国語で書いてあるので、これを日本語に翻訳した裏面シールを上から貼らないといけないわけです。(よく見ますよね)
法律もよく分からないので、みんなで手分けして調べました。

商品名、全成分、注意事項、使い方などなど…。
商品リストに載っている商品名を一個一個ググり、公式サイトや海外のECサイトに載っている商品情報をコピーし、DeepLで翻訳します。

物によってはググってもなかなか商品情報が出てこなかったり、注意事項や使い方が載ってなかったり、翻訳がどうにも不自然になったりと、猛烈にストレスが溜まりました。

余談ですが、とある海外のお香の商品名をDeepLにかけたところ、「女性たちの乱交:ジャタマンシー(夜)」と訳され、しばし絶句しました。
「これは、売って、いいの?」と困惑しながら、それとなく無難な日本語に意訳しました。

そして裏面シールとは別に、もう一つ作らなければいけないシールがありました。それがJANシール(レジでピッするためのバーコード)です。
これは輸入品/国内品問わずなのですが、普段オンラインだけで売っている会社から商品を仕入れると、JANがついていないということがよくあります。

そういう場合は、こちらでJAN を発行し、JANシールを作って貼らなければいけません。これも数が多かったので地味に大変でした。

大量のシールをキンコーズで印刷し、オープン直前に各商品に貼りまくるという作業が待っていました。膨大な数なので時間はかかりましたが、みんなでやると文化祭前日っぽい楽しさがありました。1人でやると泣くと思います。

そしてShopifyにもこれらセレクト品の商品情報を登録する必要があります。

このとき、コレクション(カテゴリー)やタグなどで、「セレクト品」と分かるように何かマークを付けておくことがとても重要です。
これはなぜかというと、店舗でしか売らないもの、ECで売るもの、自社商品とそれ以外、などをセグメントで分けられるようにするためです。

例えばECの在庫調整などをする際に、店舗でしか売らないものが大量に紛れ込むととても邪魔になるのです。

また、ポイントやディスカウントを自社商品にだけ付与したい(セレクト品は利益率が低いので)などの場合も、自社商品以外をタグやコレクションに紐付けて、まるっと除外できるようにする必要があります。

私は現在、「セレクト品」「自社商品」「カフェメニュー」「EC」「店舗」という感じで、注文データや商品データのセグメントを作っています。じゃないともう大変なことになります。

ちなみに。
私含め現場メンバーは当初、直営店にセレクト品を置くという判断に懐疑的でした。
「うちのブランドの商品が買いたいから来てくれてるのに、なんで利益率が低い他社商品をわざわざ売るの?」と思っていたのです。

が、実際に運用してお客さんの反応を見てすぐに、セレクト品を置いたことは正解だったと理解しました。
そして、「利益率が低い他社商品は競合になるから売らないべき」という発想自体が、顧客視点を欠いたものだったとも。

弊社の自社商品はECでも、全国の小売店でもいつでも購入することができます。
ただ自社商品を並べただけでは、わざわざこの店に足を運ぶインセンティブが弱いのです。

他の小売店ではなかなか見かけることのできないような(だからJANや裏面シールを作らなきゃいけないのですが!)、ブランドと親和性の高いセレクト品に出会えることは、お客さんにとって店に行ってみたいと思うきっかけになります。

そして弊社ブランドへのファン度が高ければ高いほど、「大好きなブランドがセレクトしたアイテムなんだから、きっと良いに違いない!」と信じてくれているのです。

大好きなブランドの商品に囲まれ、世界観を反映した食事を楽しみ、自分が好きな可能性が高い新たなブランドに出会える。
このようにホリスティックな体験を提供できることが、直営店の醍醐味であり、ブランドをより深く長く愛してもらうための手段なのだと学びました。

もちろん、自社商品だけ置いていたとしても、店舗にしかない付加価値を出す方法はいくらでもあります。(丁寧な接客やタッチアップなど)
が、今回の弊社の場合は、セレクト品が付加価値を増やす手段のひとつとなったなと思うのです。

手探りのカフェ運用

さらに手探りでやらなければいけなかったのが、併設するカフェのメニュー登録&オペレーション。
「ランチセットA」「ホットコーヒー」「セットドリンク」みたいなのを大量にShopifyに登録しました。

当初、私は店員一人一人がShopify POSアプリを入れたiPhoneをハンディとして持ち歩き、お客さんから注文を聞いたらその場で直接POSアプリに登録する、そしてそのオーダー情報がキッチンに自動でプリントされる…というオペレーションを想定していました。

が、結論から言うとこの方法はうまくいきませんでした。
カフェで食事を注文するときに「弊社ブランドの会員登録はされていますか?してないなら今しますか?」と迫るのは不自然だし、その場で決済をしないとなると(食事を済ませた後に決済をすると)まごつきます。
そしてメニューのかけ合わせパターンが非常に多かったので、ハンディで探すと時間がかかるという声があり、結局はこういう運用になりました↓

・店員はオーダーシートを持ち歩き、それにオーダー内容を記入したあと、キッチンスタッフにパスする
・お客さんが食事を済ませ、その後買い物もした場合は、買い物が終わるまで待つ
・食事をしたお客さんの場合は、キッチンスタッフが当該オーダーシートをキャッシャーにパスする
・キャッシャーは飲食の注文と商品の注文を合わせてShopify POS上で登録し、決済

このオペレーションも色々と課題はあるのですが、現状ではこのように運用しています。今後も改善していく必要はありますね。

分析には工夫が必要

全商品をShopify一本で運用するとなると、厄介になるのが売り上げの分析です。
仮に自社商品に「自社商品」、カフェメニューに「飲食」などとコレクション(カテゴリー)やタグをつけていたとしても、エクスポートするオーダーデータにはその情報は落ちてこないのです!

売り上げの内訳はどうなっているのか。それぞれの利益率が全く違うため、内訳をパッと確認できないのは致命的です。
結局、取り急ぎ私が考えた案としては、以下のシートを作ることでした。

・スプレッドシートに、登録している全商品の商品名を入れる
・その商品名一覧の隣の列に、それぞれ「自社商品」「セレクト品」「飲食」などとカテゴリーを記入する
・別タブに注文データをインポートする
・VlookupとCountifを駆使して、注文データの各カテゴリーの売上額と個数を合計し、内訳を確認する

これ伝わりますでしょうか。要は、「この商品のカテゴリーはこれだよ!」とインデックスを作っておいて、注文データの商品名と紐付けて合計する感じです。

アナログなやり方ですが、注文データのインポートはアプリで自動化したりもできるので、一応はどうにかなっています。が、商品が頻繁に入れ替わる場合はこのやり方だと面倒かもしれません。

CRMのために設定したこと

私はこれまで、ECのお客さんにメールやLINEでコミュニケーションを取る、いわゆるCRM業務を行なってきました。
そして今後はECだけでなく、この店舗で会員登録してくれたお客さんにもCRMをすることができるのです。

ECで会員登録してくれた人と、店舗で会員登録をしてくれた人では、状況もモチベーションも違うはずです。

そしてそれぞれの属性がその後どのチャネルでどのような購買行動をするのか、購入頻度やLTVはどれくらい違うのか、チャネルは横断するのか、最初はコーヒー1杯の購入から始まった人もその後商品の購入に至るのか、などを比較して分析したいと思いました。

そのために、顧客情報にフラグを立てる必要があります。
ShopifyにはShopify flowという、ワークフローを作れるアプリがあるので、

・店舗で会員登録をしてくれた人は、「F1@店舗」というタグをつける
・元々ECで登録していたけど、店舗も利用してくれた人には、「店舗利用あり」というタグをつける

みたいな感じのロジックを作りました。
こうすることによって、「店舗スタートの人の傾向」や「店舗とEC両方使ってくれている人の傾向」を調べたり、「店舗しか使っていない人」や「ECしか使っていない人」にそれぞれメールを送ったりして、チャネルの横断を促すことも可能になります。

また、それぞれのセグメントにステップメールのワークフローも設定し、

・カフェのみ利用してくれた人にはブランドや商品の紹介を
・セレクト品を買ってくれた人にはカフェや自社商品の紹介を
・自社商品を買ってくれた人には効果的な使い方の説明を

…という感じで、それぞれの状況に最適なナーチャリングができるようにメールを送り分けます。

そして全てにおいて、「店舗とオンラインどちらでもポイントを使う&貯めることができますよ!」とご案内しています。

今後やりたいこと

今後、この店舗を活用して我々がやるべきことは、オフラインに軸足を置いたOMO施策です。

イベントやミートアップ、ファンミーティングなどを店舗で行い、もっとブランドを身近に感じてもらい、ファンの方と一緒にブランドを作っていくべきだと思っています。

そしてこのOMOの観点において、地味に重要だと思っているのは、EC担当の私と、店舗スタッフが敵対/競合しないことです。

同じ会社内でも、それぞれのノルマを持った別チャネルの担当者同士が対立するのはよくあることです。

が、自分のKPIのために、互いのチャネルにお客さんを奪い合うような構図になると、OMOなど実現できるはずがありません。

「店舗(EC)から入ったお客さんを、無理やりEC(店舗)だけに流すようなコミュニケーションをしない」という、不文律のマナーみたいな部分もとても重要だと思うのです。これはもう、人間関係というか、コミュニケーションの話ですが。

お互いが協力して、それぞれのチャネルをお客さんが状況に合わせて使い分けてくれるように、それぞれの接点を増やす。
このような運用を目指すことが、私にとっても、店舗スタッフにとっても、お客さんにとっても便益があるのではと思っています。


以上、長くなりましたが、Shopify一本で直営店運用をしてみた体験談を書いてみました。

正直本当に手探りでやってみているので、色々と非効率なやり方をしているかもしれませんが、何か一つでも参考になる点があれば嬉しいです。(アドバイスも大募集してます)

「このへんは一体どうやってんの?」など質問がある方は、よろしければTwitterでリプくださいませ。@yuri1994san

読んでいただきありがとうございました!

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