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『半熟卵』 (500字ショート)

半熟卵料理人

ザス伯爵「この間の半熟卵というものをつくってくれたまえ。」
料理人「は、はい、かしこまりました。」
料理人は怯え切っていた。
ザス伯爵「失敗するなよ。したら、こっぴどく懲らしめてやるからな。」
料理人「は、はい!伯爵様。」
料理人はなべに水をいれて火をつけた。と、そこにドアノブの音が天井の高い屋敷に響いた。しばらくして使用人が顔を出した。
使用人「伯爵様。学者ガラバ様がお見えです。」

ザス伯爵「おぉ、とおせ、とおせ。こちらにとおせ。」
学者ガラバ「これはこれは、もう作っているのですな。半熟卵とやらを。今はどのような具合であろうな?」
料理人「今少しお待ちくださいませ。あとこの砂時計を5回ほどひっくり返せばできあがります。」

学者ガラバ「おぉ、みたいな。今はどんな様子なのか。みてみたいな。おぉみたい。好奇心をくすぐるわ。」
ザス侯爵「おい、料理人、中身を見せてやれ。」
料理人「中身はと申しますと・・・。」
ザス侯爵「中身を見せろと言っているのがわからんのか。お前はそんなこともわからんか。」
料理人「も、申し訳ございません!ただいまお見せします。」
料理人は、恐る恐る作りかけの半熟卵を割った。

学者ガラバ「ほほぉ、これが中身か。ドロドロであるな。」
料理人「はい、まだ完成ではなく作りかけですので。」
ザス侯爵「言い訳をするな。台無しにしおって。失敗だな。本当にお前はどうしようもないやつだ。」


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