アラビアンナイト珈琲店第一部『藝能M』①
「行ってしまわれましたわ」
芽衣は静かに言った。静かに讃えるような表情に悲しみが見え隠れする。
「えぇ」
「『わたしは非力だった。あがいたわ、声も出した。透明の屋根を設けられたのみだと言われたって、わたしは1人の人間だ、と声を出した。でも大河の流れを私一人で変えるのは私一人では無理だった。無理だったの。彼らは好きに言ったわ、お前はなにもできない、無能だと。喉が渇いて必死に掘った水脈はこれぞとばかりに我田引水。何?喉が渇いた?これは今お前のではない、文句か?文句をいう人間にろく