大人のヒミツのごっこ遊び
中学受験をする訳でもないのに、小学校1年の頃から学習塾に通っていた。
ずっと通っていると、年によって、めっちゃ宿題を出す先生に当たることがある。
今でも覚えているのが、授業でも使う教材の他に配布されている、自主的に進めていく計算ドリル。
アレをめっちゃ宿題に出す算数の先生がいた。
「自主的」とは…。
「自主的」だと、やらない子供とやる子供がいるが、私はちょっとずつでもやる子供のほうだった。
やらない子供ばかりで良くないから…という理由で宿題にする、ということであれば、分からなくはないけれど…。
毎週大量に出される計算ドリルの宿題が本当に憂うつだった。
私は理系科目より文系科目の方が好きである。
漢字の書き取りならいつまでもやっていられるのに…。
憂うつで、後回しで、いよいよもうやらないと間に合わないかも…となってようやく手をつける。
そんなとき、私がよくやっていたのが「脳内ごっこ遊び」である。
私は1000年に1人いるかいないかの秀才。
問題を解くスピードは超絶はやい。
ミスもない。
親をはじめ、周囲が驚くほどの、秀才。
姿勢もピンと伸びていて、鉛筆の持ち方も正しく、彼女が勉強するその姿は、とてもサマになっている。
神々しくすらある。
脳内で、そんな人物になりきって、宿題を進めるのだ。
「え?キミ分からないところがあるの?」
「私が解いて教えてあげるよ」
「ここはね、こうして、こうしたら、ほら、解けたよ」
こんな感じで、脳内で架空のクラスメイトがいるつもりになって、会話のキャッチボールをしながらドリルを進める。
脳内で、周囲の人々が秀才の私を誉めそやすヒソヒソ声が聞こえる……。
文章に書き起こすと、ヤバいヤツだな、私。
とにかく、この「秀才ごっこ」をすると、メキメキとやる気が湧き、宿題が捗ったのである。
もちろん、親からは、いたって平凡なわが子が普通に宿題をこなしているだけ…に見えただろう。
ときどき、自分でも気付かぬうちに、にんまりしていて、不審に思ったかもしれないけれど。
そして、社会人になった今。
毎日仕事に行っていると、そりゃ気乗りしない日も出てくる。
そんな日は、「ごっこ遊び」発動である。
題して「洗練されたOLごっこ」!!
私は、都会のオフィス街で働くOL。
特別美人というわけではないが、ファッションもネイルも髪形もオシャレである。
(あくまでフィクションです…。)
仕事は速くて、正確で、丁寧である。
ピンと背筋を伸ばして、物静かに、集中して、資料を作り上げる。
話しかけると、物腰柔らか。
もくもくと仕事をやり遂げる姿と、気さくな姿のギャップで、ミステリアスにすら見える、周囲の憧れの的。
大きな組織のリーダーといった華々しく上に立つ者ではないけれど、そこに居なくては困る「縁の下の力持ち」のような人。
(私は普段、リーダーよりも、よくできるサブリーダー的な立ち位置の方が好みである。)
やっぱり文章に書き起こすと、ヤバいヤツだな、私。
周囲からは、冴えない女性職員がカタカタPCで仕事しているだけ、である。
ミスだってする。
(先日、「ありがとうございまうす」って打ったぐらいだし。)
自分で気付かぬうちににんまりしていても、マスクを付けているからバレない。
そして、ココは都会のオフィス街ではない。
でも、この「洗練されたOLごっこ」していると、なんだか背筋がピンとなり、いまいちヤル気がでないような、ダルいような日でも頑張れてしまうのである。
なんだか仕事も順調に進んでいる気がする。
誰にも迷惑のかからないヒミツのごっこ遊び、オススメである。
来年退職したら「脳内ステオク(素敵な奥さん)ごっこ」をするのかな…。
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