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202406 雑記

「じゃあ、せーので脱ぐ?」
銭湯の脱衣所で、女の子が二人。何やら照れ臭そうにコソコソ話していた。

彼女たちは、ほとんど何も脱いでいなかった。
カバンや帽子だけをロッカーに入れ、可愛らしいポーチに入ったお風呂グッズを傍に置いているだけだった。なるほど、確かに友人の前で裸になるという行為は一時期ものすごく恥ずかしいものだった記憶がある。体育の授業やプールの授業、修学旅行。
そんなことすっかり忘れていた。

湯上がりのわたしは、全裸でそれを見ていた。
涼んでいたのだ。
そして、服を着たままの彼女たちの横を何人もの裸の女が通り過ぎていった。

それにしても彼女たちは脱がなかった。
なぜ自分たちがこんなにも脱ぎたくないのか、もはや彼女たち自身もその気持ちを持て余している雰囲気すらあった。
だって、どう考えても風呂に入りたいはずなのだ。
それでも「相手より先に裸になるのは嫌だ」というお互いの譲らなさによって、身動きが取れない状況へ追い込まれてしまっていた。

「ねえ、もう10分経ってるよ。」
片方の女の子がそう言った。
わたしが髪の毛を乾かしたり、服を着たりしている間に彼女たちはタオルを駆使してあとはパンツを脱ぐだけ、というところまできていた。

頑張れ、あと少しだ!
そう心の中でエールを送った。
「せーの」で裸になる、そのラストシーンを見守りたい気持ちもなくはなかったが、ギャラリーがいることで彼女たちの邪魔になってはいけないと思い直し、そっとその場を立ち去った。

人間は忘れていく生き物だから、当然過去の記憶は少しずつ薄れていく。
それでも、何かちょっとしたきっかけだったり、言葉だったり、些細なことでまたみずみずしく記憶が蘇る瞬間がある。

友人の前でパンツを脱ぐのが恥ずかしかったことや、
わたしが星のニップレスシールをつけて半裸で下北沢で踊り狂っていたこと。

今、わたしが演劇を始めるきっかけになった劇団員時代のメンバーとまた一緒に演劇を作っている。
稽古しているスタジオの鏡に映るメンバーの顔を見ながらふと、20年近く前の当時の記憶が鮮やかに蘇る瞬間がある。

もちろん、鏡に映る顔はきちんと20年分歳をとっている。しわも白髪もちゃんとある。
それでも、あの頃と変わらない眼差しやとてつもない熱量、あー変わらないなあ!と感じて胸がギュッとするのだ。

そして、重ねた年齢の分だけさらに進化もしている。若い頃が良かったなんてわたしは一つも思わない。
今が一番輝いているって、本気で思ってるし多分これからもそう。

『おもちゃワーカーズ』、チケット残り少なくなってきてるし席数に限りもあるけど、なるべくたくさんの人に観てもらいたい。
ひたむきに毎日を送る人たちへの応援歌のような作品です。

マブダチ丘田ミイ子が書いてくれたインタビュー記事に、思いの丈は全て込めて話したのでこちらの記事もどうぞ。
俳優の小野寺ずるちゃんが撮ってくれた、飾らないわたしたちを切り取ってくれた写真もすごく素敵です。文章と写真のコラボ、実現して嬉しい〜〜♡

全公演完売目指しています!
7/6(土)はおかげさまで完売ですが7日と13日はまだご予約可能です。

https://www.quartet-online.net/ticket/pashonaria2024


観に来てくださいな!




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