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なぜバンドのキーボード人口は少ないのか

別に少なくねーよ、ってツッコミもあるかもしれませんが、僕の周りではキーボードの人材不足をよく感じます。

キーボードはモテないからとか、そういう理由は十二分にあると思うのですが、音楽的観点から考えてみました。


ピアノとキーボードを一緒にすると怒られちゃうのですが、少し暴論なのは許していただいて、直感的には、ピアノ経験がある人にはキーボードを弾くのも難しくないと思いますよね。実際ピアノで難しい曲が弾けるくらい左右の指が自由に動く人には、キーボードでポップスやロックの伴奏をするのは演奏難易度という観点では朝飯前だと思います。

小さい頃にピアノを習っていた人って結構な割合がいると思うので、その人たちがキーボーディストとして名乗りをあげれば、キーボードの人口不足なんて起きないはず。じゃあなぜ実際にはキーボードは足りないのか。。。

これには、ピアノとキーボードを演奏する上でのいくつかの違いが影響していると思います。


違い1: ピアノは個人競技、キーボードは集団競技

もちろんピアノでも連弾のようなチームプレーはあります。でも、小さい頃からピアノを習っている人は、個人で練習をして、発表会でも個人で演奏することがほとんどだったと思います。学校で合唱の伴奏をする時だって、ピアノはリズムの要。人に合わせるよりは、自分がリズムを刻んでいく楽器です。

一方でキーボードはバンドの中では非リズム隊。ドラムやベースの刻むリズムに合わせて、人の演奏を聴きながら全体の音の厚みを増したり、ポイント毎にフレーズを埋め込んだりといった下働き的な要素が大きいです(もちろん曲によりますが)。

ピアノだけをやってきた人がキーボードとして演奏することになると、ここが最初のつまづきポイントになるわけです。人の演奏をよく聴いて、そのリズムにノリながら演奏しないといけない。しかもスタジオでは自分の音が聞こえづらかったりもするので、環境の違いになかなか戸惑うこともあるかと。

逆にここさえ乗り越えられれば、あまり怖いものはないかもしれません。もともと自分一人でもリズムをキープしたまま難しい演奏をできるポテンシャルのある人たちなので、他の人の音を聴けるようになって、そこに合わせられるならば最強の助っ人になれるのです。


違い2: ピアノは楽譜に合わせる、キーボードは周りに合わせる

 ピアノを習ってきた人は楽譜通り弾くのが非常に得意です。というか、楽譜がないと弾けないという人もいたりします。クラシックならまずは楽譜があって、楽譜の通りに弾くのが第一段階なので、それもそのはず。

一方でキーボードは楽譜がないことなんてザラにあります。バンドスコアには確かにキーボード譜が載っているかもしれません。でも、その通り弾けば良い時ばかりではないんですね。ライブで演奏する上では上モノ(ギターとキーボード)の間での音のバランスや、ボーカルとの音域の調整が必要になることがしばしば。ギターやボーカルと音域を棲み分けるために、楽譜通りではなく、自分なりに現場合わせで譜面を変えて演奏するのです。

それをやろうとすると、今弾いているコードの構成音は何で、ボーカルの音が何で、ということを意識しないといけない。楽譜だけじゃなくて、コードをある程度知っておく必要があります。ここが第二のハードルなのかな。ただ、ピアノは音の関係が視覚的に分かりやすい(短3度なのか長3度なのかとか)ので、仕組みさえ覚えてしまえばコードを理解するのは容易だと思います。


後は音楽の好みとか、キーボードが求められるジャンルとピアノ経験者の好きなジャンルに乖離があるみたいな、そういうのもありそうだなと思いました。が、これはどの楽器にも言える話なのでキーボード人口が少ない理由にはならないかも。

キーボードって一見地味だけど、僕は一番面白い楽器だと思います。なんでも好きな音を出せて、曲の雰囲気を如何様にも変えられるのはキーボードです。ストリングスでクラシカルにするか、エレピでジャジーにするか、オルガンでロックにするか、シンセリードでテクノにするか、なんでも出来るわけです。

もっとキーボード人口が増えて、こういう話を共感できる人がたくさんできると嬉しいな、と思っています。

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