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不調が続いて一年、心だけでも元気でいたい

かすかに空気が硬くなって、陽射しは丸みを帯びてきて、秋の気配がする。
毎年いつの間にか秋の始まりに立っている。
夏に溶け込んでいた秋が静かに顔を覗かせる。

去年の秋は苦しかった。
9月から体の調子を崩し始めてどんどん悪くなっていった。
転職をして、人生で初めて仕事が楽しいと思っていた矢先の不調だった。
回復の見込みが立たずに泣く泣く退職した。
病院をいくつも回っても原因が分からず、しっかり治療も出来ないまま耐えてきた。
もうすぐ一年ほど経つ。
波はあるけれど、発熱も痛みも一日も引かない。
ペットボトルが開けられずに夫にお願いする日が増えた。
立っていられない時もあるし、外出をすれば2、3日ベッドで寝込んでしまう。
やりたいこと、頑張りたいことはたくさんあっても体が気持ちに追いつかない。
私はどうなっていくんだろうと不安が膨らんでいく。

こんな私との結婚を決めた夫は本当に優しい人だと思う。
家事をこなすので精一杯の私をいつもそっと励ましてくれる。
おいしいごはんありがとう、綺麗にしてくれてありがとうと言われて、一人で涙をこぼす夜もあった。
ぼろぼろの体でも夫の優しさのおかげで気持ちはずっと元気でいる。
今は日々の料理やお菓子作りを楽しみに小さく生きている。
キッチンに立てない日もあるけど、私はせめて、いつも温かい食事と笑顔で夫を迎えたい。

不調が続いてから人に頼るのが少しだけ上手になった。
子供の頃も、大人になってからも、無理をしてでも自分のことは自分でやらなきゃと思っていた。
もっと仲間に頼ったって良いんだよと、学校でも職場でも言われたことがある。
できないことが増えた今は、無理をする前に助けをお願いしている。
私にもちゃんと味方がいることを知って心強い。

小さな幸せを見つけることも上手になった。
毎朝のお味噌汁を考える時間。
天気や時間によって変化する遠くの山の表情。
ドアの前で猫たちとわくわくしながら夫を迎える瞬間。
ほとんどを家の中で過ごす変わり映えのない日々だけど、毎日幸せに暮らしている。
時間がたっぷりできると気持ちにもゆとりができた。
立ち止まってから見えてきたものもたくさんあった。
このささやかな幸せは、体が元気に戻っても忘れずにいたい。

今月も通院を予定している。
今の私の一番の目標は健康。
周りと比べて焦ったり、思うように動けない自分を責めたりせず、まずはそこを目指して頑張っていきたい。
今年は良い秋になる予感がする。

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