コロナと「黄禍」

もう一つ、2月末に考えていた文章があるので載せておきます。

当時と状況は変わっていますが、記録のため。

日本の感染者が限られていて、ヨーロッパが感染爆発しておらず、アメリカ経済が脅威を織り込んでいなかった頃。つまりコロナが他人事だった頃。



「自然災害で被害が出た地域があったとします。
地震とか津波とか台風だとか川の氾濫、これらの自然災害は、被害が物理的にどうなっているか分かりやすい。予防が難しかったとしても事後の対策は立てやすい。
人・モノ・金・情報、これらを流動的に動かすことで社会は動いてますから、これらの流れを復旧して人や物を投入すれば現状回復していく。成果の積み上げが可視化できる。
けど病気の場合はモノを動かすことや、人と人が連携することがマイナスに働く可能性がある。逆に交通インフラや物流インフラ自体がウィルスの媒介となって被害を拡散してしまう恐れがある。インフラが信頼できなくなる。

中国の武漢ではもう都市を丸ごとシャットアウトしてますが、日本はそうではない。船や飛行機に対する水際対策がもう一旦崩壊している今、今度は国内で感染の連鎖が起こる事は目に見えているし、それはもうすでに既に起こっていると。
そうなると今までは中国から来る人モノ船飛行機、外来のものを警戒していれば済んだことがウチ側の問題になってきます。

通学や通勤で使っている電車やバスが張り巡らされていることが日本の都市圏の特徴で、その正確さが日本が誇るところでした。
しかし一旦「汚染」されてしまったらもう、それはリスクの塊となってしまう。
最初は、京都とか横浜とか観光地こわいねぇ近づかないほうがいいねえ、と余所事のように捉えてたとしても
ご存知のように日本の交通網は緻密ですから、我々の、あなたの生活圏自体にもう入り込んでいるわけです。

怖くないわけがないですよね。住んでいる場所や生活スタイルによっては、あまり人に合わないまま過ごしてる人もいるでしょうが
多くの家庭は両親のどちらかもしくは両方が通勤している。家族の誰かしらがウィルスをもらってきてしまったら、その時点でその家は危ない。
入院しないといけないのに、検査も受けさせてもらえるかわからない、発症しても直し方がわからない、家族が苦しんでいても感染の危険があるので看病できない。
一度感染したらその後免疫ができるという保証もない。むしろもう一回かかったら重篤化するかもしれない。
そんな病気を家族の誰がどこでもらってくるかもわからない、職場や教室が安全なのか、安心できるかどうかわからないって、もはや悪夢です。

我々の日常生活は脅かされています。誰も想像していなかった脅威によって。映画館、スポーツジム、図書館、ホテル、遊園地、スタジアム、銭湯、ありとあらゆる娯楽施設が疑惑の対象となってしまう。
・・・日常生活だけではありませんね。冠婚葬祭、受験就活、ライフイベントがまともに迎えられるか不安な方もいるはずです。
目には見えないから一般人にはわからない。怖いんですよね。ゾーニングして、数値で状況判断できる専門家に委ねる他ない。

今回の件に関しては、物理的に罹患するリスクに加え心理的な問題もかなり大きいと思っていて、
怖いです、不安です、安心できないです。この状態が続いて何が起こるかって言うと、社会の分断です。
ちょっと大げさな言葉になりましたけど、これはもうすでに起こっています。
みんな言葉に出してなくても内心怖いから自分たちと対象を切り離そうとするわけですよ。中国はやばい来ないで欲しいとか関西やばいとか東京には行っちゃいけないだとか。
端的には間違っちゃいないわけですけど、病原菌はどこにでも到達し得るもので、本来罪は人間にも地域にもない。
でもやはり人間のことだから、弱いから他人を攻撃しちゃうんです。そういうのは元来秘めていた差別意識と結びつきやすい。
今世界中で、中国人は本人がかかっていなかったとしても病原菌みたいな扱いを受けることが増えているし、アジアに興味関心がない人にとってはもう中国人だとか日本人とかも関係なく黄色人種自体が差別的発言を受けている。

これに近いことは、日本国内でも、それも細かい単位で起きるでしょう。
目に見えない属性に対する恐怖と敵意が社会にどんどん蔓延って心理を乱す。
いわれなき差別のお墨付きを与えてしまう。後々まで尾を引くような亀裂が入りかねない。この後収束したとしても深刻な傷をそれぞれ中に残します。内戦みたいなものです。

未知の恐怖に対して、人々のモラルが問われるように思います。
今回の騒動で、Pray for Wuhanといったムーブメントが起きなかったのは個人的に悲しかった。
「加油中国」「山川異域 風月同天」支援物資を送っていた方々がいるのは知っています。ただ、災害の性質上、世界を見渡しても火の粉を振り払うので精一杯の人がほとんどな様です。」

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