見出し画像

心も体も女性だったはずの僕が"男性"になるまで(2/2)

この記事は、

の続きです。

男の方がマシ

Xジェンダーにもホルモン治療という選択肢があることを知った僕は、男性ホルモン治療を受けたいと思うようになりました。

心が男でも女でもないなら、男女どちらの体で生きても違和感があることに変わりありません。
どうせ社会的には男か女のどちらかとして生きざるを得ないことを踏まえると、僕にとっては男になる方がマシだと思ったのです。

ホルモン治療をするには、まずジェンダークリニックなどに通って性同一性障害の診断書をもらう必要があります。
また僕は当時未成年だったため、保護者の同意書も必須でした。

すぐに母に相談しましたが、
「心が男性っていうならわかるけど、どっちでもないのにそんな治療をする意味がわからんわ」と反対されました。まあそう思うのは当然です。

一時の気の迷いではないことを証明するためにも、数か月かけて根気よく説得し続けたところ、「まあ言われてみれば、あんたほどの毛深さで女として生きろってのも酷な話よね」と言ってくれました。
そういう問題ではないのですが、どうやら本質の部分はわかってくれていたようでした。


ホルモン治療

母の承諾のもと、近所のジェンダークリニックに通い始めました。
誤診を防ぐためか、2~3週に一度のペースで問診とカウンセリングを受け、約3ヶ月後に性同一性障害の診断がつきました。

女性の体に男性ホルモンを投与すると、女性ホルモン優位の状態から男性ホルモン優位に変化していきます。
そのため、初めはホルモンバランスの乱れで女性の更年期障害のような症状が出るという話を聞いていたので、春休みに打ち始めて体を馴らしました。

1本打っただけでは何の変化もありませんでしたが、2本目を打った数日後から喉の調子が悪くなり始め、徐々に声が低くなりました。
また何をやっても筋肉痛を起こすようになり、遅刻しそうなときに少し早歩きをしただけで足首が裂けそうな痛みに襲われたこともあります。

2ヶ月後には、友達に「明らかにガタイ良くなったよね」と言われたり、事情を知らない人でも何かを察するぐらいには声質も変化していました。

恐れていた更年期障害はそれほど強くなく、せいぜいもともとあった立ち眩みが悪化したぐらいで済みました。


"男性"になった今

僕は現在22歳で、ホルモン治療を開始してからそろそろ3年になります。
ずっと変声期のようだった声も、ようやく落ち着いてきました。

職場では最低限の人間にのみトランスジェンダーであることを明かし、表向きは男性として働いています。
トランスジェンダーだと明かしている数少ない人間にも、面倒なのでXジェンダーだということは言っていません。



時々、「工業高校さえ選ばなければ、僕は自らが男性化するという選択をせずに済んだかもしれない」と思うことがあります。

"女性"じゃなくなったことで得られなくなった幸せはいくつもあるだろうし、容姿・体・戸籍の性別がちぐはぐであるが故のストレスは決して少なくありません。
それにホルモン治療を続けること自体、金銭的にも身体的にも負担です。

それでも、今が幸せだし楽しいのです。

「ホルモン治療を受けたから幸せ」というわけではなく、10代のうちに自分の性と向き合ったおかげで今が幸せなんだと僕は思っています。
結果的に僕は男性として生きることを選んだけれど、もし女性のまま生きていたとしてもちゃんと幸せだったんじゃないかなあ。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?