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父の死により姉妹の運命が逆転 3

叔母に騙され、連れてこられた日本酒の酒蔵を持つ商家に奉公して数か月後、ある日の夕暮れにお店の前を掃除していたら、声をかけられた。

「ひょっとして、斗内(私の故郷)の良子ちゃんじゃないかい?なんでここで働いているの?」顔を見たら、自宅近所に住んでいたおじさんだった。
「あんたのお母さんは、商家で働いているとは言ってなかったよ。親戚の家で子守りをしていると言ってたけど~」

おじさんは、商売の関係でここに来たと話していた。やはり、ホントの事情は母には伝わっていないらしいことを察知した私は、おじさんに母への伝言を頼んだ。

今、ここで働かせてもらい、元気でいることだけ伝えてほしい。

後年、母から聞いたことだが「良子は人身売買で売られてしまった。叔母のいうことを鵜吞みにするのじゃなかった」と後悔したらしい。母にとっても、まだ11歳の私を当時手放すのは、悲しかったことだろう。まして、
私だけではなく、妹も養子縁組に出したのだから・・・

けれど、昭和初期。8人の子どもを残されたシングルマザーにとっては、生きるために仕方のないことだった。

それでも、私は奉公先に恵まれていたと思う。一生懸命働いていたので、意地悪されることもなく、お給金を毎月いただき、自分なりの幸せを感じていたのである。

一方、私が断ったために、私の代わりに養子縁組で遠くに住んでいた妹には、悲劇が待ち受けていたのだった・・・続く


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