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夜明け前の救急車に揺られながら、「帰ってきたら、noteを書こう」と思っていた話

あれよあれよ、という間でした

日曜日の夜明け前、私は、都内を疾走する救急車に乗っていた。

夜中に目が醒めた。枕元のスマートフォンを見ると3時半すぎ。最近、早朝に目が醒めるお年頃ではあるが、それにしても早すぎる。そしてなんだか、左胸が痛い。
しばらく目を閉じて二度寝を試みるも、どうにも痛い。激しい痛み、というほどでもないが、胸の中央から左寄りのある一点が疼く。なんだか嫌な感じがして、スマートフォンで「胸の痛み 夜中」などで検索してみると、狭心症とか心筋梗塞とか、おそろしげな病名が出てくる。20分ほど経っても、痛みは弱くも強くもならず続いている。

手遅れになる前に、救急車を呼んだほうがいいのか?
こんな時のために「Q助」というアプリを入れていたのを思い出し、アップロードする間ももどかしく質問に回答すると「いますぐ救急車を呼びましょう」と出てきて、それこそ心臓が縮んだ。
踏ん切りがつかなくて、今度は「救急安心センター」に電話してみた。症状を説明すると、電話口の女性は
「その状態でご自分で病院に行くと、倒れる可能性があるので、救急車で行ってください」
と言う。『近くに救急外来をやっている病院があるから、歩いて行くか』とか思っていたのだが、ここで一気に「ヤバいのかも」という感じになった。

そのまま119に繋いでくれて、今度は救急隊の男性に「15分くらいで行きますので、安静にしていてください」と言われた。
が、私は知っている。少し前にTwitterで「救急車は、帰りは送ってくれない」というつぶやきを見た。どこに搬送されるかわからないし、パジャマで電車に乗る訳にはいくまい。
着替えてマスクをし、鞄の中身を改め、加湿器を止めて救急隊を待った。すっぴんは仕方ないとして、髪は……と鏡を見ると、奇跡的に寝癖が付いていなかったので「ちょっとラッキー」と思って、笑ってしまった。完全に混乱していたと思う。

コートも着込んでしまったので、ソファに座っておとなしく待っていると「もしかして、ここに戻って来られない可能性もあるのか?」という考えがよぎった。両親に宛ててとか、何か書き残しておくべき?
その瞬間、インターフォンが鳴った。

救急隊が到着し、ストレッチャー乗りますか?と言われたが、歩けるのでお断りした。車内で手早く心電図やら熱やらを測ってくれる。同時に問診。
「心電図はすごくきれいなんですけど、胸の痛みは心配なので、循環器の先生で探しますね」と言ってくれた。
頼もしくて涙が出そうなのだが、立て続けに2件受け入れを断られているのが聞こえて、ものすごく申し訳なくなってしまった。このご時世に、胸が痛いだけの私に、こんなリソース割かせてすみません……となる。でも今さら「大丈夫です」とは言えない。胸、痛いし。症状をそのまま伝えて、専門家が「救急車を呼んで」と判断してくれたのだし。
4件目くらいで行き先が決まった。「〇〇病院に行きますね、15分くらいです」

そんなわけで、今朝、私は人生初の救急車に乗った。症状のある本人なのに、ストレッチャーではなく、その横の長椅子に座るという中途半端な状況で。

車に酔いやすいのを忘れていました

当たり前だが、救急車はサイレンを鳴らしながら道を行く。
運転している隊員さんと助手席の隊員さんとが、何やら声を掛け合いながら慎重に、かつ急いでくれているのがわかるが、夜明け前だというのに都内の大通りはけっこう車が走っているのだろう、割と頻繁に、速度の増減やブレーキが入る。
そこで思い出した。私はものすごく車に酔いやすい。地元が栃木県なので、車で日光に何回も行ったことがあるが、途中で吐かずに「いろは坂」を上まで登れたためしがない。
加えて今は、体調不良(?)、寝不足、空腹、緊張。さらに、横向きに座っている。なぜ、素直にストレッチャーに寝かせてもらわなかったのか。ばかばかばか、私ったら。だいたい、準備万端で出迎えるし、さっさと救急車に乗り込むしで、隊員さんたちを微妙な空気にしてしまったじゃないの。素直に寝ておけばよかった。
そうこうしているうちに、あっという間にハイ気持ち悪い。何なら今、胸の痛みより車酔いがつらい。なんて口が裂けても言えない。

「着きましたよ」がいろいろな意味でありがたかった。そして「入るときはストレッチャーじゃないとダメなので、横になってください」と言われ、さらにばかばかばか、私のばか、だから最初から!!となっているところへ、とどめの一撃が。
「びっくりしちゃいましたかね、念のためですからね、大丈夫ですよ」
優しさで人が殺せる、と心底思った。ずっと申し訳ないのだけれど、この時が最高に申し訳なかった。穴があったら入りたいってこれかー、と思った。

痛みの言語化が致命的に下手なのです

救急車のストレッチャーから病院の診察台に移るのも、ドラマでよくある「いち、にーの、さん」っていうのではなく、自分でいそいそと移動。
今度は病院の機器で心電図や血圧を測られながら、再度問診。
救急隊の方にお礼を申し上げたかったが、タイミングがわからず、そうこうしているうちにい去られていた。消防署宛てに、お礼状を書こう……。

そして、ここでまた新たな問題が。いや、前から問題だったけれども、改めて。
私は、痛みを言語化するのが下手だ。
それ以前に、痛みを感じるのが下手だ。以前、歯が痛いので歯科に行き「左下の奥歯が痛いです」と訴えたところ、先生に「え……。この状態なら絶対、上の、この歯が痛いはずだけど……左下……?え、上のここより、左下……?」と困惑されてしまった。

「痛みってどんな感じですか?チクチクとかズキズキとか」「えーと(どちらもしっくり来ないが)ズキ、って感じですかね……」
「胸の表面が痛い?それとも内側の奥の方が痛い?」「表面に近いですが、皮膚の上ではないというか……皮膚の一層下というか……(奥と言われれば奥という気もするが、そんなに内部ではないことだけは確か)」
「痛みは強くなってますか?」「弱くも強くもなってないです……あ、今ちょっと、さっきまでより少し強かったかも……でもまた戻った……感じです」

そのほかにも「背中が痛くないか?」と訊かれれば、さきほどまでは痛くなかったが、横になって(内面、ひどく反省しているため)緊張しているせいか、痛いような気がしてくるし、車酔いのせいか気圧のせいか、頭痛もしてくるし……。先生も看護師さんも診察しづらかろうと思い、さらに申し訳なかった……。

血圧が高い(高血圧症で治療中)以外は熱もないし、ここでも心電図はきれい、むしろ良いと褒められた。さらに採血とCTスキャンもしてくれたが、心臓にも肺にも異常は認められないとのこと。
急を要する重大な病気ではなさそうということで「しばらく様子見てね」と言われ、帰宅することになった。

完璧な装備と思ったが、足元だけ抜かりました

救急外来では仮計算となるため、後日、正確な金額で清算するよう書類をもらって終了。
けっこうな額を支払うことになるが、保険だからこの程度で済んでいるんだろう。電話窓口の方といい、救急隊の方といい、救急外来の方といい、本当にありがたかった。涙が出た。

建物の外に出ると、すっかり朝だった。それほど寒くはなく、すがすがしい気分だったが、足元が寒い……マフラー、コートは完璧だったが、足元だけクロックスだった。脱ぎ履きしやすい方がいいと思ったんだもん。実際、今の今まではこれで正解だったんだもん。外に出たら、穴から風が入って冷たいだけだもん。

人もまばらな電車に乗って、無事帰宅した。痛みで目が醒めた時から4時間ちょっと、経っていた。長いのか短いのかわからない。
実際に重大な病気ではなかったけれども、手術も入院も大きなケガもしたことがない私にとって、おそらく最も「最悪、死ぬかも」と思った4時間だった。
実際は物心つく前、ゴルフのティーを飲み込んで窒息しかけた時が最も近づいたのだろうけれど、憶えていない。祖父が私を逆さにして、背中をばんばん叩いて吐き出させたとか……ありがとうおじいちゃん……。
それはさておき、ベッドが乱れたままの我が部屋に戻ってきて、白湯を飲んで一息ついた私は強く思った。
いよいよ、本当にnoteを書き始めよう、と。

これからよろしくお願いします

少し前から「Twitterみたいに短い文じゃなくて、まとまった文章を書きたいな」と思っていた。
日々、思うことはたくさんある。会社でいろいろな特性テストをやった結果、私は分析傾向があって、とにかく考えることが好きらしい。考えている題材は何でもいい、頭を動かすという作業が好きとのこと。

思いあたる節はたくさんある。いつも何かしら考えている。
でも、ありとあらゆることを考えているはずなのに、それがどこにも残っていない。文章とか絵とかはもちろん、私の頭の中にも残っていない。
最近、気づいていた。私は昔の、ことさら自分の感情をあまり憶えていない。20代、30代、40代、「何をしていた?」と訊かれれば、ある程度は答えられるけれど、「どんなことを考えていた?」と訊かれると困ってしまう。

何かしらの形で外に出さないと、考えても意味がない。
インプットは、アウトプットしないと意味がない。
さんざん言われているし、わかっている気でいた。
でもなんとなく「うまく言語化できないし」「みんなが読むに耐えるものじゃないとダメだし」などなど、言い訳を考えては先延ばししていた。

でも今朝のことで思い知った。人間は、いつ死ぬかわからない。「いつか」を待っていたら、手遅れになるかも。
たぶんこれが、タイミングというものだ。何よりも、誰のためでもなく、自分の頭を整理して、考えたことを憶えておくために書きたいと思う。

何をテーマにするか、どう書いていくか、まだ何も決めてないです。
でも、私の頭の中をどうにかこうにか、正直に書くつもりです。
よかったら、たまに読んでください。
これからよろしくお願いします。


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