こどものこえ 稽古8日目

こどものこえ。こどものこえが消えていく。こんな世界から。見えていたものが見えなくなって、きこえていたものがきこえなくなる。あの歌、あの言葉、あの時のあの子。

作品が整いつつある時期だと思う。今回は繰り返し同じシーンを返しているのもあってか、形として見えるのがはやい気がする。安心し始めていた。

この日は朝から、とんでもない事件のことを知ってしまった。旭川市で14歳の女の子がいじめの末に亡くなってしまった。殺されてしまった。いじめの末に。こどものこえがとどかず、大人も加害者も想像力が欠如しているおぞましい事件だと思います。

この事件のことを、リモート稽古の時にお話しました。拙い言葉で。まとまらない言葉に役者さんたちは耳を傾けてくれていました。今もどこかで、いじめられている人はいて、それは大人もこどもも関係なく、どこかで苦しんでいる人はいて、家の中にいるかもしれない、心に鍵がかかっているかもしれない、命を絶つことを決めている人もいるかもしれない、誰かが笑っているころ、誰かは泣いている。おんなじ時間の中で。

こどものこえを上演したからといって、劇的になんにも変わらないし、なんにもならないことのほうが多いかもしれないけれど、私はこの作品が想像力を育てる種になってほしい。起きてしまったことは変えられず、変えられるとするならこの先の未来しかない。

今回の出演者さんは、20代、30代でこれからをつくっていく年代です。先導していく年代だと思っています。私たちはこころにとめなければならない。そして、未来の大人も出演してくれます。


寄り添うと言うことはとても簡単です。でも実際には想像もできていないことが山ほどあります。私たちは考えなければなりません。とても重たい空気の稽古となりましたが、見て見ぬふりはできませんでした。

「悲しい事件が起きてしまった」という傍観者のままではいたくありません。

長い間の夢からさめて、
現実の海を航海する。

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