デバイスのその先に

恋をしたの。

5月に君と出会った。

その時君は薄いデバイスの向こう側で顔も性格も知らなかった。

僕は終わった感情を埋める為に、暇つぶしと称していろんなことをした。

その時、始めたのがこれだった。

寂しさを埋めるのに最適なツール。

その人との繋がりは声とメッセージ。

ある種匿名性が守られている空間の中で、僕の名前があの人から消えないように毎日顔をだした。

なんでか分からないけど、凄く暖かくて居心地が良かったんだ。

いつからか、あの子を求めて薄いデバイスに夢中になっていた。

彼女は親身になって僕の話を聞いてくれた。僕の口から出てくる言葉なんて面白くないことばかりなのに。

人生は低迷中。それをやってる時はとても楽しかった。また明日も話せる。次の日も。

彼女はよく泣きよく笑う。感情豊かなドラマヒロイン。僕には凄く眩しく見えた。

もしあなたが泣くなら、隣で僕はただ何もしない人を演じる。もし笑うなら、隣でもっと大きな声で笑い声をあげたいそう思った。

また次の日もその次の日もあの子を求めて顔を出す。淡い期待を抱いて。


9月12日なんでか分からないけど、彼女からデートに誘われた。

アホみたいに嬉しくて。飛び跳ねた。そして、分かったの。本気で好きなんだって。

いろんなことを想像した。この気持ちを伝えようかな。一緒にいれたら幸せなんだろな。そんなことを思ってたら当日。

ウキウキして珍しく朝早く起きた。待ち合わせ場所はお互いが使っている路線がぶつかるあの場所。

近くにつれて、ドキドキする心臓。

カッコつけて一生懸命絞り出して送ったLINE。

集合地点へ着いてしまったトレイン。

深呼吸して降りる。

数メートル歩いた先、改札の外に君は待っていた。

背は低くて、髪の毛の長い可愛い女の子。僕との差は30cm。

心の距離も初めはそんくらいだったのかもしれない。

彼女とのデートは一瞬だった。瞬きをする時間も惜しい。

ご飯を食べて、散歩して、カラオケ、お酒を飲んだ。

僕を見てケラケラ笑う。

彼女はベロンベロンに酔っ払ってた。

終わりにつれてモヤモヤする何か。

ここを逃したらもうチャンスはないんじゃないか。

また、デバイスの先に行ってしまうんじゃないか。

夜風に当たりながらあなたの隣で考えた。

その後、時間延長をして、ネカフェに誘ってみた。

だけど、モヤモヤが消せず時間だけが過ぎてった。

君は酔った勢いか突然僕にキスをする。「すき」

なんてバカな男なんだろう。嬉しさと戸惑いが混じり合いどんな顔をしていいかわからなかった。

「僕と付き合ってください。」

僕が夢見た未来に1歩近づいた気がする。この笑顔を絶やさないように隣で支えられるように頑張ろう。彼女の存在が今までもこれからも僕にとって生きる糧になる。

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