リレー小説 : コントラスト①
まえがき
こんちは、ゆにおです!
こんな素敵な
リレー小説の私設コンテストが開催されてます。テーマは「電車にゆられて」だそうです。
実は、少し前に電車が舞台の作品を書いてたけん
その作品で参加させていただきます〜。
これだけでも完結しとるから楽しめます。
あわよくば、どなたかがリレーの続きを書いてくれるかも!?しれません。(チラッ)
ご興味ある作家さんは、
どなたさまもどうぞ遠慮なくカモン!
電車通学する
思春期のハイスクールガール&ボーイが
登場人物です。
男女視点の2部構成になってます。
どうぞお楽しみください!
(※初出はPrologueにて「帰りの電車で」というタイトルで発表しています。
noteに投稿にするにあたり、加筆修正を加えました。)
※11月29日追記
続きを書いてもらいました^_^
この方の続きでもええし、ゆにお作品の続きでもええんだと思います(自由型!)
◇
リレー小説 : コントラスト①
ゆにお・作
(Side Girl)
みんなで帰りの電車の中で、スマホの画面見せ合って。きゃははっておおはしゃぎしながら、スカートがめくれちゃうのもお構いなしに両脚をジタバタさせて、バカ笑いして。
けどその後の、徐々に友達が電車を降りていなくなって、私ひとりっきりになったときの、ああ、この静けさ……。電車はガタゴトうるさいはずなのに、人の声がないってどうしてこんなに淋しいんだろう。
ないわ、マジで。あー、怖っ。
この「沈黙」と「空白」に、待ってましたとばかりに「冷静」が顔を覗かせる。ふと、「なんのために生きてんだろ」とか「てかさっきって、あんなに笑うほどたのしかった?」とか「うち、本当は真理沙のことあんま好きくないかも。あの子、うちへのマウントすごくね?」とか……。騒いでる時には隠れてた気持ちが、頭の中に響く。渦巻く。
それは確かに自分の声なのに、自分のじゃないみたいに暗くて沈んで淀んだ声。
すると……魔が差す、っていうのかな。
ふーっと、あーこのまま駅のホームから飛び降りてみようか、なんて想像してみたり。そしたら明日から早起きしなくていーし、真理沙ともお昼食べなくていーし。
それに……私の「好きぴ」が、明らかにうちじゃない子を狙ってる姿に傷つかなくてもいーじゃん。やだよね、男子って。露骨に態度違うくてさ。
とか。
ああ、だめ、だめ! 考えるなー! って打ち消しても、あたしの制服のプリーツスカートがブワッと逆さまになってホームに落下していく姿が、脳内に何度も何度もリフレインする。飛び降りる、巻き戻し、また飛び降りる、はい、巻き戻し。ああもう、TikTokよりしつこいよ。
何、この現象。てか、何か名前がありそう。心理学的なやつ。空白現象? 違うか。
……はあ、ダメだ。誰かとバカ騒ぎしてなくちゃ。気を逸らさなきゃ。毎日楽しくってたまんないみたいに振る舞ってるクセに、私には向き合いたくないことが、いっぱいありすぎるんだ。
私はグループLINEを立ち上げた。用事なんかない。話題もない。だけど、私をひとりにしないで。ひとりにしないでいてくれるなら、返信くれるのは真理沙でも別にいいし。
誰か、誰か。無言、怖いよ。
◇
(Side Boy)
帰りの電車でクラスの女子たちと乗り合わせた。いわゆるカーストの上の方にいる子たち。男子よりむしろ女子のほうが「軍団」感出るよな。だっていっつも集団でつるんでるんだもんな。
乗客が少ない車輌だからって、おおはしゃぎして迷惑極まりない。
しかも、俺のこと、一切気づかねーし。真正面に座ってんのに。
おい、俺はあんたたちのクラスメイトですよ?
うーん、何かこう、「シカトしてる」っていうんじゃないんだよなあ。マジで「視界に入らない」って感じ。てか、空気?
まあ、俺は陰キャだからな。こんな扱いが妥当ってことか。
あーあ。いいなー、カースト上位のヤツらは。
彼氏彼女作って、休み時間は動画撮ってTikTokあげて。いっつもキャーキャー、ワーワー騒いで。「この学校の主役はうちら!」ってオーラすげー出してるけど、帰り道もこの調子かー。
君らって、怖いもんなしか。「この世界の主役はうちら!」くらいに思ってるかもね。
なんて、口にはせずに頭の中でやさぐれてたら、間の駅で桑田も西原も城ヶ崎もぽつりぽつりと電車を降りていった。ひとり減り、ふたり減り、三人減り。成瀬って女子が一人になった。
すると、さっきまであんな大口を開けてはしゃいでいた表情(かお)に、翳(かげ)が差す。ガバッと広げてた脚も自信なさそうに閉じて、なんとなく身体全体がさっきより小さく縮こまったように見えた。
俺はその姿と表情に、図らずもドキッとした。
うつろな瞳を半分隠すふせまつげ。半開きの唇。身体の力も抜けて、座席にもたれるように腰を丸めて座り、スマホは手から離れスカートの布に置かれている。まさに「心ここにあらず」というような。まるで、女子高生の抜け殻のような佇まいだった。
俺は直観的に感じた。
――こいつ、実は相当病んでるな。陰キャの俺と、同じ要素を持ってるんじゃないか――
さっきまでの陽気な姿と今の「陰」のオーラの開きが大きいだけに、成瀬の心の闇は、より一層深そうだと俺は予感した。
やがて成瀬は、腕と脚を組んで俯き、うとうとしはじめた。身体を丸めるようなその仕草が、まるで自分の心と身体を守ろうとしているように見えた。
明日から、教室で大騒ぎしているこいつを見ても、俺はさっきの翳りに満ちた表情(かお)を思い出すだろう。
俺は西陽の射す電車に揺られながら、成瀬に勝手な親近感を感じていた。
fin
⬛︎お読みくださり、ありがとうございました!
by ゆにお
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